第7回(2017年) 富澤基金による研究助成の審査経過・結果報告

基金運営委員会委員長 山本正幸

 「日本分子生物学会若手研究助成富澤純一・桂子基金」による第7回研究助成の最終審査を5月13日に行い、5名の方々に助成を決定いたしました。応募者は121名、お名前からの推定で男性94名、女性27名でした。書面審査により9名の方をヒアリングにお招きし、全員の出席を得てヒアリングを実施しました。研究内容および研究環境等について伺った結果、助成対象者として男性2名女性3名を選びました。
 これまで通り審査過程で性別に配慮することはなく、特定の立場を優先したということもありません。富澤基金の目的とするところは、分子生物学、あるいはさらに広く生命科学の新しい展開を目指す研究を志しながらも、研究費の欠乏や生活上の制約のために十分に力を発揮できていない若手研究者に、使途を限定しない助成を行って、研究の発展を可能にさせることです。換言すると、研究内容が高度な提案であっても、他の研究資金でその大半は実行可能というような場合には、助成の必要度は低いと判定される傾向にあります。またこれまでの研究業績に対する褒賞でもありません。この方針は今後とも堅持されますので、応募される方はご留意ください。
 審査過程では応募者が日本分子生物学会会員か否かは非開示でしたが、結果的には助成対象者5名のうち4名が会員、1名が元会員でした。ヒアリングを行った9名の方(男性4名女性5名)については5名が会員、2名が元会員、2名が非会員でした。
 基金運営委員会および分子生物学会事務局では、使途を限らない本助成の特色を活用した、創意に富んだ研究推進提案を歓迎いたします。来年度以降も優れた研究を掲げて奮ってご応募ください。
 末尾になりましたが、本基金の創設者である富澤純一先生は、本年1月26日にご逝去なさいました。享年92歳でした。基金運営委員会はここに謹んで哀悼の意を捧げます。本基金の設立をはじめ、先生が我が国の分子生物学の発展に心を砕かれ、科学者としてまさに見事な生涯をお送りになられたことに深く敬服いたします。当基金の助成期間は残り3年となりましたが、委員会では富澤先生のお考えを体現する若手研究者の支援になお一層務めていく所存です。

「日本分子生物学会 若手研究助成 富澤純一・桂子基金」基金運営委員会
委員:山本正幸(委員長)、小原雄治(副委員長)、上村 匡、大杉美穂、近藤 滋、塩見美喜子、杉本亜砂子、東山哲也

■第7回(2017年)日本分子生物学会 若手研究助成の助成対象者
(氏名・所属機関・研究題目)50音順

○片岡 研介(基礎生物学研究所クロマチン制御研究部門)
テトラヒメナの核の二型化から明らかにするゲノム不安定性の基本原理
Principles of genome instability elucidated from nuclear dimorphism in Tetrahymena

○高瀬比菜子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 疾患モデル動物解析学分野)
細胞間シグナル伝達による精子幹細胞の増殖制御機構の解明
Mechanisms of Wnt signaling activation underlying the proliferation of undifferentiated spermatogonia

○田尻 怜子(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
ECMの変形を介した体型制御のメカニズム:ショウジョウバエ外骨格を例として
Body shape regulation by anisotropic deformation of exoskeletal ECM in Drosophila

○二橋美瑞子(茨城大学理学部)
カメムシの分散型動原体の分子基盤と進化
Molecular basis and evolution of holocentric chromosomes in Hemipterans

○山口 知也(熊本大学大学院先導機構 (併任)大学院生命科学研究部がん生物学分野)
ROR1による生体膜ダイナミクス制御機構の解明
Role of ROR1 in cell membrane organization and dynamics