掲載中の情報(詳細)

・投稿者名:鐘巻将人

・渡航した国:アメリカ

・渡航の目的:Cold Spring Harbor Laboratory meeting
86th Symposium: Genome Stability & Integrityへの参加

・渡航の時期と滞在した日数:2022年5月31日~6月7日(8日間)

・体験談:
【準備】
 二年半ぶりの海外出張ということで、不測の事態に備えてかつてよりも入念に準備を開始。入国規制が6月から緩和で入国時検査や隔離は必要なくなりましたが、アメリカ出国前72時間以内にPCR検査でCOVID19陰性証明を得る必要があります。PCRテストをどこで受けるのか?またもし陽性になってしまったら?その辺りが心配で海外出張に踏み切れない方は多いのではと思います。
 渡米先での検査に関してですが、日本の水際対策基準では基本PCRでなくてはいけません。定量的抗原検査(簡易キットではなく機械を使った方法)も認められるようですが、海外の抗原検査内容には細かいことまで書いていないことが多く、ほぼPCR一択になると思います。実はCSHLにも検査サービスがありますが、週に一回(木曜日)しかやってくれないそうで、今回は月曜米国出国で利用できませんでした。航空会社が紹介しているマンハッタンの病院も考えましたが、行くのが面倒なのでJFK空港でやっているPCR検査を当日受けることにしました。また、帰国時陽性になってしまったことも考えて、旅行保険にも入りました。その際には、感染して隔離待機になった場合の補償などに関しても宿泊費300ドルまで補償など具体的に調べました。
 渡米に際しCOVID19ワクチンの接種証明書が必要です。これは、市役所の保健課でもらえますが、マイナンバーカードを持っていると、「接種証明」というアプリを使って、証明書をオンラインで携帯に表示させることもできます。今回はこのアプリを使いました。
 今回のハプニングは、二年半海外に出なかったこともあり、自分のパスポートが失効していたことに気がついていなかったことです。パスポートを取り直すには、本籍証明を集めたりする必要があり結構面倒でした。デジタル技術を使った手続きの迅速化に期待したいところです。

【出国からアメリカ到着】
 実はアメリカ向けのフライトに乗る24時間以内にも、COVID19感染検査して陰性証明が必要です。これは必ずしもPCRである必要はなく、いわゆる抗原簡易検査で十分です。羽田空港の場合は、T1ターミナルにある検査所で抗原検査を申し込めば、「簡易抗原検査」を1900円で受けることができて、結果も15分で出るのでこれで十分です。日本にいるとCOVID19検査はPCRでなくてはダメみたいな印象ですが、アメリカでは抗原検査で認めてもらえます。
 そこで、事前に上記の簡易検査をオンライン予約して、当日いつもよりも1時間早く羽田空港に到着することにしました。検査所に着くとオンライン予約していたこともあり、すぐに簡易検査キットを渡されて、仕切りのあるテーブルへ行くように指示されます。自分で鼻からサンプルを採取して、簡易検査キットに液を流し込みます。これを受付に持っていって、15分後に結果を聞くという仕組みでした。誰も見てないので、ズルできちゃいそうに思いましたが、きちんとやって陰性証明をもらいました(最終的にはメールで証明書が届きます)。
 チェックインでは、その陰性証明書とワクチン接種証明書の提示を求められました。出発ロビーは閑散としていますが、でもそれなりに人はいるという感じです。搭乗口付近のお店はまだお休みしているところもありました。

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 機内は大体6~7割ぐらいでしょうか。搭乗機が羽田―NYというドル箱路線であることを考えると、他の路線の搭乗客はもっと少なそうです。

photo 13時間のフライトの後、JFK terminal 1に到着しましたが、入国審査の列はいつもに比べて2/3ぐらいの感じです。前は入国審査に1.5時間ぐらいかかりましたが、今回は1時間もかからず済みました。COVID19関係の証明書は準備するように機内で言われていましたが、入国審査では全く提示を求められず。この辺にアメリカのユルさを感じます。

 アメリカ国内のマスク状況は、JFK内では割としている人が多いが、電車ではしている人としてない人が半分程度の感じでした。マスクやっている人も外ではアゴマスクになっていました。私も郷にいれば郷に従えで、特にマスクの必要ない場所ではマスクしないことにしました。


【CSHLと学会期間】
 CSHLに参加するには事前に3回のワクチン接種情報を登録し、参加前にCOVID19感染検査(抗原検査OK)をするように求められています。知り合いのサンディエゴ在住研究者DGさんは無症状でしたが感染が発覚し、急遽オンライン発表になりました。ご本人には申し訳ないですが、きちんと感染予防システムが機能しているということで、それなりの安心感はあります。日本も抗原検査で良いので、もう少し気軽に検査することを推奨すれば良いのにと思います。
photo シンポジウムの発表会場とポスター発表会場では、マスクを着用するように掲示があり、全員ルールに従っていました。アメリカ人の参加者に聞いたところ、CSHLは国内でもとても厳格に感染予防ルールを守っているとのことです。でもコーヒータイムや1日3回の食事の際は、マスクなしで会食しますし、テーブルに仕切りもありません。バーも普通に営業しています。規制のない場所では、マスク着用は個人の判断に委ねられているようでした。

 二年半ぶりの対面での国際ミーティングでしたが、やはりZoomでのミーティングでは得られない多くの研究者との会話にとても刺激を受けました。CSHLのミーティングは夜の10時半までセッションがあるタフなミーティングですが、その中に人々の直接交流をたくさん作る仕掛けがあります。3度の食事、コーヒーブレーク、チーズ&ワインパーティー、ビーチピクニック、バンケットなどで今まで話したことのない研究者とテーブルが一緒になって、そこからサイエンスを含めて話が広がっていくのは、オンラインミーティングでは得られない醍醐味です。また、会場にはScience, Cell, Nature Medicineのエディターが来ており、彼らとも色々と情報交換が出来ました。サイエンスは人間が活動して行うものだということを再確認しました。

【帰国】
 帰国に際して、最も気になっていたのがPCR検査です。これも、オンラインで事前登録が出来ます。いつもより2時間早くJFK空港に到着して検査会場を探すと、出発ロビーの端っこに幟旗を立てて検査会場が作られていました。PCR検査をしたいというと、パスポートの確認をしたのちに、日本の検査証明フォーマットの紙に氏名を書くように言われて、220ドル(高い!)を支払い、検査会場に向かいます。医者はスペイン語で携帯電話しながら、私のサンプルを片手で摂取し、1時間後に戻ってくるように言いました。なんともユルい。
 ダンキンドーナッツでコーヒーとドーナッツを注文して、それを食べて時間を潰して、1時間後に戻ると、陰性とのことで無事に陰性証明書を手に入れました(やった!)。それをMy SOSというアプリに写真を撮って登録しました。搭乗機の情報やワクチン証明も登録して、チェックインカウンターに向かいます。
 チェックインカウンターでは、紙ベースの各種証明書を確認するはずだと思うのですが、「My SOS app全部登録した」と伝えたら、何も確認せずにチェックイン終了しました。それに伴い、ファストトラック入国可になりましたが、これでは嘘情報登録しても入国可になるのでは?と思いました。でもアメリカで、日本並みの管理を求めるのは無理なのかもと思います。無事に搭乗して13時間半のフライトののち、羽田空港に到着しました。
photo 搭乗機は第3ターミナルの端っこに到着して、乗客は延々と歩くのですが途中にファストトラック入国用の確認所が設けられていました。ここでパスポートとMy SOSアプリの提出を求められて、入国可となります。手続きはとてもシンプルでした。最後の入国審査場手前にある、千住博のどデカい滝の日本画に心癒されます。


【最後に】
 今回のCSHLシンポジウムはDNA複製、修復、組換え及びその周辺領域のスター研究者を集めた二十年ぶりの学会で、歴史的にも1968年に岡崎令治先生がラギング鎖における不連続DNA合成(Okazaki fragment)の研究結果を発表した大変由緒あるものでした。そのような特別なイベントでしたが、日本から私を含めて3名しか来ておらず、ヨーロッパの研究者が皆来ているのに比べて、大きく溝を開けられている印象を受けました。まだ日本は出づらい雰囲気がありますが、そこを押して海外に出ることも必要ではないかと感じた次第です。きちんと準備すれば、特に問題なく出入国できる状況にあります。まだ多少リスクはありますが、前向きに海外の学会参加を考えてみても良い時期になっていると感じました。

 

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