掲載中の情報(詳細)

・投稿者名
斉藤典子

・渡航した国
カナダ

・渡航の目的
FASEB Meetingへの参加

・渡航の時期と滞在した日数
2022年7月23日~8月9日(20日間)

・体験談
 ある日、Meetingオーガナイザーの先生より、核内構造体に関する学会でトークと座長をしませんか、とお誘いのメールをいただきました。コロナ感染の可能性を気にしつつ、こんなありがたい機会は試してみようと判断し、おそるおそる「是非参加させてください」と返事をしました。比較的小さな学会で日本からの参加者は私一人でした。内容は素晴らしく大変意義深いもので、知人に会って専門的な深いディスカッションができて、今でも行ってよかったと思います。
 しかし、帰国時のPCR検査で陽性となり、「コロナ療養期間終了後、既に回復しているにも関わらず、PCR検査にて引き続き陽性が出たために、陰性証明の代わりとして領事レターを用いて帰国」という方法で無事帰ることができました。同じ状況下にある、またはこれから渡航で不安に思われている方など、どなたかの一助になればと考え、ご報告します。

(陽性判明)
 7月28日:学会終了後に空港のPCR検査場へと向かいました。ここで陰性の証明をもらって翌朝カナダを発つ、という予定でした。寝不足で疲れていましたが、さほど体調が悪い感じはありませんでした。
 PCR検査の結果はまさかの陽性。途方にくれました。まずは、契約していた海外渡航保険の窓口に電話しました。日本はまだ夜中の2:00頃。ひとまず予約してあった空港付近のホテルに向かいました。カナダは感染者の行動規制が緩やかで、マスクをしていればどこに行ってもよい、と言われました。
 ホテルにチェックインしてまずしたことは、明日からの宿を探すことです。インターネットでノバスコシア州のハリファックスという最寄りの街にあるホテルを検索して、+10日の予約をとりました。小さな街だからか、あるいは夏休み中だからか、空き部屋はほとんどなく、高めのホテルをなんとか予約できました。
 次は明日のフライトのキャンセルです。Air Canadaは、コロナ感染で変更を与儀なくされた場合の特設電話番号があり、そこでキャンセルの手続きをしていただきました。療養を終えて帰国する日にちが決まったら、振替便の予約もこの番号でできますよ、費用はなしですよ、と教えられ、ひと安心しました。
 陽性になっただけあって、喉が痛くなってきました。まずは寝て体調を回復させること、そう言い聞かせました。

(命を守る)
 7月29日:ハリファックスのホテルへ移動しました。当地の最高気温は18℃程度でした。酷暑の日本では考えられませんが、暖房をつけてすごしました。喉がどんどん痛くなってきました。
 チェックインできるまでしばらく時間があったので、救急外来へと直接行ってみることにしました。しかしタクシーの運転手さんは「ハリファックスの医療事情は悪い。救急に行っても診てもらえるのは11時間後だよ。」といいます。実際に窓口をのぞいてみると、どんよりとした長い列ができていました。ここで待つだけで私の体調は悪化すると判断し、ホテルへ戻りました。この小さな街で私は大丈夫なのかしら、と少し不安になりました。
 自分の命を守るためにどうしたらよいものか、、、時間帯がおおよそ同じで文化も似ているアメリカ東海岸に住む親友にメールで状況を説明してアドバイスを請いました。私が大学院生だった時にポスドクで大変お世話になった女性です。すぐさま、近隣の病院を調査してリストをくれ、対応のしかたを教えてくださいました。貴重な時間をさいて次から次へと情報を探していろいろと指示してくれるこのアメリカの知人に頭が下がります。しかし私の英語理解能力が低いためか、いただいた番号に電話しても、電話が混み合っていて延々「please hold on」を聞かされるか「うちでは予約を受け付けてません」です、、、ああ、かつて昔アメリカに住んだときもこんなもんだったなあと思い出しました。
 部屋にチェックインすると最終手段で811に電話しました。これは緊急医療番号で、911ほどではないけれど十分に健康被害があるときに電話する番号です。そこでも延々待たされましたが、なんとかつながりました!問診が始まり、まずは私を患者リストに登録してくださりました。また、再度の問診して必要であれば、paxlovidというコロナに対する経口薬をホテルの部屋までもってきてくれる、ということになりました。このお薬はアメリカBiden大統領やFauci首席医療顧問にも処方されたもので、北米ではよく知られているようでした。なるほど、この国ではワクチンに加えて薬も普及しているのかと驚きました。ただ誰でも処方してもらえるものではなく、60才以上か症状が悪い人が選ばれるとのことで、2回目の問診で“Your symptoms are light.”と診断された私のもとに配達されることはありませんでした。それでも誰かが私のことをケアしてくれるという安心感で、陽性反応が出てからおよそ30時間後にぐっすりと眠れました。

(経済を守る?)
 7月31日:喉の痛みがほとんどなくなり体調が戻ると、別の心配事が明確になってきました。このホテルにチェックインする際、普段使っているクレジットカードでは決済できなかったのです。お金が不足している、と言われました。たまたま持ってきた別のカードで承認されましたが、あれ?そういえばカードの利用限度額ってどうなっていたっけ? そして今いったいあといくら使えるのかしら??これからの食費、2回目のPCR検査費、空港までのタクシー代など、どれかひとつでも払えなければ帰国できません。ネットで限度額をあげようとすると5日かかる、と。いやいや、1~2日中でなければ明日の食事を節約すべきかどうかもわからないのでした。
ラインメッセージ図1. 主人との二人三脚で日本のクレジット会社に連絡し、利用限度額をあげました(主人が大活躍したかは不問にします(笑))。その後、主人が娘に宛てたラインメッセージ(を娘が私にそっと教えてくれました)。これで娘は安心したようでした。  そこで日本にいる主人と大騒動のうえ、各所に電話して、なんとか限度額を上げる手続きをしました。一時はウエスタンユニオンという方法で家族から送金してもらう準備もしましたが、不要になりほっとしました。この騒動中に外で、どーん、と大きな花火があがりました。カナダの祝日British Columbia Dayの前夜祭だったようです。皮肉な状況に涙が出そうになりました。もはや自分の体調がどうなのかもわからず(図1)。本当はゆっくり休みたかったです。緊張感で睡眠もろくにとれなかったのでした。ホテルのレストランで温かい食事をテイクアウトしたときにやっと人心地つきました。

(帰国を計画)
 この投稿欄には、PCR検査陽性後9日、あるいは10日後にPCR検査陰性となり、無事に帰国された北島智也先生小宮怜奈先生の記事があります。なるほど私もおよそその頃に受検すればよいのだな、そしてその72時間以内後の飛行機にのればよいのだな、と考えました。しかし帰国のタイミングを決めるのは大変むずかしい。テストで陰性が出てそこから1~3日後のフライト、というのは簡単にとれるのかしら、と疑問が湧いてきました。
 また、親友の浦聖惠さん(千葉大)から、「領事レターで帰国した例」のネット記事が送られてきました。なんとなくひっかかる。実は渡航前に今本尚子先生(理研)からも、「陽性になって領事レターを取得する方法」といったメールを受けていました(感謝!)。まずは状況を教えていただこう、と最寄りの領事館にお電話してみました。
 すると丁寧かつ手際よく、必要な書類を提出するようにと指導してくださりました。医療機関からの「回復証明レター」とパスポートの写真を送るのが第一ステップです。それを領事館が確認した後に、陽性証明(厚生労働省が認める方法と検体などの基準をみたしたもの)と航空券の写しを送るのが第2ステップでした。

 8月7日:2回目のPCR検査を受けたところ結果は陽性でした。まさか。しばらく前から体調よいのに。「PCR検査は感度がよいので、症状が回復して感染力がなくなっても20日間くらいは陽性になることはよくある」という知識が蘇ります。これからさらに10日もホテルでたった一人過ごすなんて精神的にまいってしまいます、、、領事レターで帰る可能性に注意がむきました。領事館に2度目の陽性証明書をメール提出しました。何もかもが不安で主人はもちろん、様々な方とLINEや電話で相談しました。

 8月8日:すでに他の書類は審査済みのためか、朝一番にメールで領事レターを発行いただきました。命の恩人です。ほっとしましたが、本当に帰国できるかまだ不安です。MySOSにも登録しました。陰性証明を登録できないので、審査の結果は黄色です。でも、領事館から、「出発時の搭乗の際に、領事レター、回復証明レター、陽性証明を印刷してもっていくこと、そして、日本入国時も同様これらを紙媒体提示するように。」という冷静沈着にして強い指示をいただいていましたので、それに頼ることとしました。

 8月9日:空港につき、フライトのチェックインカウンターで上述の紙媒体の書類と、パスポート、e-チケットを渡しました。ワクチン接種証明書とMySOS登録の提示も求められました。担当のおじさんがそれぞれを確認し、「で?baggageはいくつ預けるの?」と聞いた時は夢を見ている気分でした。
無事搭乗できて、日本への入国審査もこれらの書類と黄色いままのMySOSで大丈夫でした。待機も指示されませんでした。帰宅した時は、夢では?魂だけがこの家に戻ってきちゃったのかしら、と少し不安になりました(笑)。翌日、久しぶりに家のベッドで目覚めると身体中からエネルギーが湧いてきたように感じました。
 帰国にPCR陰性証明が必要という日本のルール、G7の他の国同様に緩和されないものかと時折に思います。

 

さて冗長に書きましたが、経験者としての情報をまとめます。

・コロナ療養期間終了後、既に回復しているにも関わらず、コロナ検査にて引き続き陽性が出る場合に、陰性証明の代わりとなる領事レターを発行していただけることがあります。私の場合は、医療機関が発行する回復証明レターとフライトチケット、パスポートの写し、2回目の陽性証明をメールで提出することが求められました。

・カナダ出発の際には、領事レター、回復証明レター、陽性証明を印刷してもっていくことが必要でした。そして、日本入国時も同様でこれらを紙媒体で提示することが必要でした。

・1回目の帰国前PCRテストで陽性になった場合、まずは療養につとめることをおすすめします。回復したら、2回目のテストで陽性になっても帰国できるように、早い時点で領事館に相談するとよいかもしれません。

・海外渡航保険に入っておくことは必須です。コロナ感染した場合の医療費、ホテルの延泊費用、航空券再予約などにかかる費用をカバーするものを選びました。

・クレジットカードの限度額を十分に引き上げておくことは意外に重要と思います。2枚もってゆくと安心です。

・コロナ抗原検査簡易キット、体温計、解熱鎮痛剤(イブやロキソニン)を持ってゆくとよいかもしれません。

・注意しても感染することはあると覚悟し、PCRテストで陽性になってもパニックにならない、いつかは帰れると努めて楽観的になるのが大事と感じました。

 

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