・投稿者名
平谷伊智朗
・渡航した国
イギリス
・渡航の目的
Japan-UK Regulation through Chromatin Conference 2022への参加
・渡航の時期と滞在した日数
2022年8月19日~25日(7日間)
・体験談
【準備】
イギリスが2022年3月にコロナに関する水際規制を完全撤廃したというのが心のどこかにあり、しかも、出国直前は忙しさにかまけており、渡航準備は全くのおろそかでした。ワクチンは3回接種済ませていましたが、念のため取得しておこうと思っていたワクチン接種証明書の取得も直前まで先延ばし。出国5日ほど前に動き始めた時には、自分がマイナンバーカードを持っておらず、証明書発行は郵送で2週間もかかることも判明し、取得は断念しました(区役所に行けばその場で何とかなると楽観的に考えていたのですが全然甘かった。。仕方がないので代わりにマイナンバーカードを申請しておきました。2ヶ月かかるそうですが。笑)。
その時点ではさすがに少し焦って色々ネットで調べましたが、「ワクチン接種証明書が必要」という文言はやはりどこにも見当たらず。ということで、まあ何とかなるでしょ、と楽観的に構えて旅に出ました。今回のシンポジウムの日本側参加者7名のうちで、ワクチン接種証明書を取得しなかったのはおそらく私だけではなかったかと思いますが、結果的に証明書は不要で問題なく出入国できました。何かの時の交渉材料にワクチン接種済証の紙切れは持参しましたが使う機会はありませんでした。
という訳で、日本で事前準備したのは、(1)現地のPCR検査センターのオンライン予約、(2)スマホへのMySOSアプリのダウンロード、そして(3)海外旅行保険加入、の3つでした。(1)は出国数日前、(2)と(3)は出国前夜に済ませました。(3)についてはオンラインで下調べをして、コロナになった時の対応がFAQに明記されている商品を選びました。
スマホもいつの間にかすっかり便利になっており、私の機種はこの7月からは海外到着後にボタン一つで切り替えて24時間単位でネットがどこでも割安で使えるようになっていました。
【出国からイギリス到着】
パスポートと航空券のみで全てのゲートを通過可能で、イギリス入国時は自動ゲートで人と話すことなく入国でき、本当に水際対策ゼロでした。成田発ヘルシンキ行きのフィンエアの機内はマスク着用義務があり、CAも常時マスク着用。ヘルシンキからロンドン行きの便ではマスク着用義務はなくなり(当然CAもしていない)、着用率は20~30%くらい。ロンドンに着くとヒースロー空港内マスク着用率はさらに下がって10%くらいでしょうか。空港の外に出るとマスクはほぼ0%となり、現在の日本とは全く異なる風景が広がっています。
【現地滞在中】
街中ではマスクしている人は皆無なのですが、シンポジウム会場内はイギリス側の主催者が我々に配慮してくれて、マスク着用が義務づけられていました。当然ながら、発表者はマスクを外すことが求められますが、興味深いのは質問者にもマスクを外すことが推奨されていたことです。そしてマイクが届かない(orマイクが来るのが待てない)人はその場でマスクを外して大きめの声で質問。欧米では口元や顔の表情がコミュニケーションの重要な一部になっていることを改めて実感しました。
シンポジウム期間中に日本側参加者の皆さん数名と会場を抜け出して、事前予約しておいたPCR検査センターに行きました(うっかり私だけがパスポート持参を忘れましたが、PC画面でスキャンしたパスポートを見せたらOK。こういう融通の利き方は外国ならでは)。検査自体は待ち時間含めて10分ほどで終わり、残りは全てメール連絡とのこと。夜には無事に現地の書式の陰性証明書が届き、半日ほど遅れて手書きの日本の厚労省書式の陰性証明書も届きました。
現地に滞在中に、スマホのMySOSアプリで1つずつ登録作業を済ませていくと、アプリの背景色が赤から黄、そして青(=全ての手続完了)へと変わっていきます。ワクチン接種証明書の登録は「任意」とあったので「登録しない」を選択(そもそも証明書を取得してこなかった私にはこれしか選択肢がない!)。そして、現地で入手したPCR陰性証明書(先に届いた現地の書式のPDFをアップロード)をMySOSアプリで登録すると「審査中」という表示に変わります。これが「審査完了」に変わると手続き完了なのですが、それまでに半日以上かかりました。ワクチン接種証明書を登録していないせいかも、と気になりだした頃に「審査完了」となって無事に背景色が青に変わりました。
【帰国】
ロンドンのヒースロー空港入りして、帰国便のチェックインカウンターでPCR陰性証明書が求められましたが、スマホ画面上のPDFを見せてOK。羽田空港到着後は、ターミナル3から20分以上延々と歩かされましたが、途中で何箇所かあるスクリーニングはスマホのMySOSの青い背景色を係員に見せておけば全てお咎めなし。あとは事前に答えておいた質問票のQRコードとパスポートがあればスムーズに通過できます。無事に入国したら、自分が預けた荷物がベルトコンベアでもう回っていて待ち時間は0分。日本に帰ってきたことを実感しました。ちなみに、ロンドンでは荷物がベルトコンベアから出てくるまでに1時間以上かかりました。コロナによるロックダウンに伴う大量解雇で色々な業務が回っていないのかなと推察しました。
【終わりに】
結果的に、イギリス出張には現地でのPCR陰性証明書のみが必要で、ワクチン接種証明書の取得も不要でした。9月7日には海外出国72時間前のPCR検査もなくなるということで、そうなると、いよいよコロナ以前と変わらない状態で海外渡航が可能になりますから、海外の学会はさらに参加しやすくなるはずで、これは朗報です。
また、今回は日英の二国間シンポジウムで二年越しについに現地開催が実現したせいもあってか、イギリス側の受け入れ研究者の日本側への心遣いが手厚く、異国の地にありながら、人情は確かに国境を越えて存在するのだなと感慨深いものがありました。日本では人情を感じる場面も最近は少なくなりましたから。
この2年余り、在宅勤務やオンライン学会参加で働きやすくなった反面、副作用も大きいと日々感じます。研究とは生身の人間が行う営みであり、研究集会に参加する意義は、必ずしも発表自体だけではなく、発表前後の人々とのやりとりにあるのだと、今回も改めて強く気づかされました。食事や世間話を交えながら少しゆっくり話すことでお互いの考えていること、今後の研究の方向性、さらには性格なども分かり、それが信頼感や共同研究、そして留学も含めた人的交流につながっていきます。ですから、今回の旅を終えて、もっと頑張って海外から人を呼んで積極的に交流する努力をしないといけないと痛感しました。そういった活動を通して諸外国の研究者と良い関係を築いていくことが、ひいては国内外の研究の健全な発展につながっていきますし、そう考えると日本の豊富な観光資源は非常に追い風になります。
その意味で少し気がかりなのは、現在もまだ外国人研究者(というか全ての外国人)を日本に招待する際にビザ申請が要求されている点です。現在、日本での国際会議が非常に開催しにくい要因はここにあり、実際に、非常に楽しみにしていた秋の国際シンポジウムが中止となってしまいました。学問とは継承に他ならず、この状況が続くことは研究の世界では副作用が大きすぎます。このような措置の一刻も早い撤廃を強く望みます。