●日 時:2013年12月4日(水)11:45 ~ 13:00
●会 場:神戸国際会議場 3階 国際会議室
●参加者:約400名
●講 演:
「未来を見通した研究テーマの選び方」
堀田 凱樹(東京大学名誉教授)
昨年の「コミュニケーション、プレゼンテーションの達人になる」(通称コミュプレの達人)を受けて、年会二日目のセッションでは、プレゼンテーションの内容、つまり研究テーマについて考えてみました。研究者を目指す若者にとって、研究テーマを何にするかは、非常に重要な問題です。シンポジウムの前半では情報・システム研究機構の元機構長で東大および国立遺伝研名誉教授の堀田凱樹先生に基調講演をお願いしました。堀田先生ご自身、将来を見越した発展性のあるテーマを常に模索されていたそうです。研究室選びでは学内外を問わずいろんなボスに会いに行き、また論文を読み、それがその後大変ためになったとおっしゃっていました。与えられたテーマをただやるのではなく、自分で調べて考えるという努力を今の若者にもっと期待されています。ご講演の内容については是非全文記録をお読みください。大変ためになります。
また、セッションの後半で行いましたパネルディスカッションでは、ケータイ端末をつかって会場の意見を聞きながら研究テーマの選び方について考えてみました。アンケートサイトには多くのアクセスがあり大変盛り上がりました(会場参加者400名)。練習設問では会場の皆さんの属性を伺いました。やはり「若手(学部学生、大学院生、ポスドク)」が68.5%と多かったです。設問1)所属研究室を選んだ理由は? では、「テーマや興味で選んだ」が61%でした。健全な結果だと思いますが、私が学部4年生だった頃を思い出すと、選ぶ段階でどのくらいその研究室のテーマ(内容)を理解していたかは、疑問です(笑)。「PI(ボス)で選んだ」は13.6%でしたが、実はもっと多いと思っていました。PIの人柄や研究に対する情熱は研究室選択の大きな要素になると思っておりましたが、案外気にしてないんですね。設問2)研究テーマに満足していますか? では65%の方が「満足している」と答えています。「満足していない」、「どちらともいえない」の計32.3% を大きく引き離しています。設問3)満足している理由は「面白い、興味をそそるテーマ」が一番多くなっています。逆に設問4)満足していない方の理由は様々でしたが、「部分的で一貫性がない、他の人のお手伝い的なテーマ」が22.8%と高率なのが目立ちます。これに関してはPIの責任が重いですね。次に設問5)研究室や分野の変更についての考えを教えてください、では66.5%が「もっと面白い分野があったら積極的に変更したい」を選んでいます。パネリストからの意見にもありますように非常に健全だと思います。実際に変更するには勇気と強い意志が必要だと思いますが、是非実行してもらいたいです。それで設問6)現テーマの将来性の有無、についてもお聞きしました。「将来性がある」は「ノーベル賞級の将来性」と合わせて64.6%とかなりの高率です。すばらしい!
母集団が当セッションに参加するようなモチベーションが高い若者ですから、個人的には「ノーベル賞級の将来性6.4%」がさらに高いとよかったです。もっと遠慮せずにノーベル賞を狙ってください。続いての設問7)将来やりたい研究テーマを心に秘めている? では、「はい」が48.9%と約半分。「いまはまだないが、必要性は感じている」が35.2%。合わせて84.1%。これは大変楽しみです。皆さん、虎視眈々とチャンスをうかがっていますね。是非既成概念を打ち破るような研究テーマを見つけて、実行してください。最後に設問8)将来さらに発展すると思われる分野は? 面白いことに「iPS」、「ヒトゲノム」を抑えて「まだ姿が見えない新分野・異分野融合研究」が29.8% とトップです。まだ何か未知なる大発見があると信じている人が3割近くいます。私も実はその一人です。
さて、全体を総括して「いいテーマ選びとは」堀田先生のお話にもありましたように、特にアカデミックでやっていこうと考えている人は、やはり将来を見越して考えるべきです。誰かが考えた続きをするのは、練習あるいはサイエンスの「作法」を学ぶためにはいいのですが、そこまでです。大学院を修了した段階で、そこから最低30年はこの世界にいると仮定して、生涯にわたって情熱を注ぎ込めるテーマを若い時から模索しておくべきです。また「新分野・異分野融合研究」に期待するのであれば、人と同じことを考えていてはダメですね。常に既成の研究分野に対して問題意識を持ち、視野を広げておく必要があります。
私もちょうど50才になり、この世界に入ってから20数年が経過してしまいました。そろそろラストスパートをかけなければと感じています。研究者という職業を選んだこと後悔しないために。
(文責:座長・小林武彦)