理事長からのメッセージ(2014年初春)

portrait of Prof. Noriko Osumi

学会はみんなでつくろう!

 明けましておめでとうございます。
 2014年が皆様にとって素晴らしいものになりますよう、心から祈っています。

 2013年の12月は慌ただしい月でした。「師走」は、師匠の僧がお経をあげるために東西に馳せる月と言われますが、日本分子生物学会にとっては、年会が開催される時期です。昨年の第36回年会は、近藤滋年会長の直前エフォート120%という肝いりで、単独開催でありながら参加者7,836名という、賑やかな年会となりました。サイエンス関係では、門脇孝先生を委員長とするプログラム委員会により指名されたオーガナイザーによる「冠シンポジウム」というスタイルが目を引きました。また、塩見美喜子先生を委員長とするキャリアパス委員会が企画された2つのランチョンセミナーが大盛況であったと聞いています。

 ……「聞いています」という表現を使わざるを得なかったのは、私自身が他の企画に参加していたからです。中でも「理事会企画フォーラム」と称する「研究不正関係企画」は、第1日目から3日目まで午前・午後1コマ(90分)ずつ、合計6コマが充てられ、実際には各セッションの終了時間が伸びたりしましたので、合計で10時間に及ぶ時間を割きました。他のサイエンス関係セッションとは平行して行いましたので、毎回の参加者は数十名でしたが、延べ人数としては200名くらいであったでしょうか。小原雄治副理事長・研究倫理委員長、中山敬一副理事長、篠原彰年会ワーキング委員や執行部の多大なご尽力により、研究者サイドだけでなく、研究資金配分機関、マスメディア、Nature編集者等も参加し、活発な議論が為されました。各セッションの「まとめ」はすでに学会HP上に掲載してあり、さらに全文記録が公開される予定です。今後、昨年6月に行った会員webアンケートや今回の議論をもとに、「研究公正局」のような組織が必要なのかどうか、学会としてはどのように研究倫理についての意識啓発や教育に関わるべきなのか、取り組んでいきたいと思います。

 関連して、暮れも押し迫った26日に、東京大学から「中間報告」としての記者発表があり、合わせて理事長宛てに「論文不正の疑いに関する調査(中間報告)の公表について」という書面が届きましたので、こちらも翌日の27日付でHPに公開しています。そのコメントにも記しましたが、日本分子生物学会としては、生命科学分野研究の健全な未来に向けて、自らの襟を正して研究不正問題に対処することが重要と考えております。私たち科学者は、研究費のかなりの部分が公的な資金によって担われていることを念頭に、社会からの信頼を損なうことのないようにしなければなりません。そうでないと、自由な意志に基づく基礎研究を展開することが難しくなるでしょう。

 「社会との関わり」について、近藤年会では「ガチ議論」という企画で、鈴木寛元文部科学副大臣、原山優子総合科学技術会議議員などもお呼びして、科学政策についてのパネル討論を行いましたが、こちらはUstream配信やTwitterでのコメントを受付けました。私自身は、もう一つの企画「市民公開講座:生命世界を問う」に登壇させて頂きました。こちらは別名「TED風プレゼン企画」であり、たった12分の持ち時間で「研究の楽しさ、研究者の人となり」を伝える、というミッションでした。リハーサルも9月に日本科学未来館で行ったのに加えて、当日午前中にもゲネプロを行うという力の入れようであり、私自身も普段とは別の緊張感を持って臨みました。追ってYouTubeに動画がアップされ、当日会場に来られた700名余の方々以外の市民の方々にも視聴して頂けるという意味で、より波及効果の大きな企画になったと思われます。

 年会では他にも、楽しい「アート企画(Genes to Cells表紙の展示、サイエンス画像のコンテスト、Jazzセッション等)」や「海外ポスドク招聘企画」など(盛りだくさんに!)ありました。最終日午後の「2050年シンポジウム」等のセッションまで参加された方も多く、各種表彰式などは一大「学芸会」的なノリだったと思います。それらも含め、第36回年会についてのアンケートを現在web上で行っています。「ここが不満・良くなかった」という点だけでなく、「良かった・続けてほしい」企画については、今回年会に参加されなかった方も含めて、是非ご意見をお寄せ下さい。皆さんの意見のフィードバックが次の年会(年会長は小安重夫先生です)に繋がります。学会は皆でつくるものなのですから。

2014年1月
特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第18期理事長
(東北大学大学院医学系研究科)
大隅 典子