理事長からのメッセージ(2019年7月)

明日のために、その1

会員の皆様へ

 アメリカではバイオインフォマティックを目指していた若者がAIに流れるようになったと聞きました。世界の流れは早く、経済のみならずサイエンスの世界もあっという間に日本は置き去りにされそうな雰囲気です。日本分子生物学会は規模的には世界レベルかもしれませんが、サイエンスの中身についても世界のフロントとして、海外からもこの年会は見逃せないという評判を築きあげたいものです。

 英語というハンディキャップをかかえていた日本は、世界に先行する内容で世界と伍してきた感じがありましたが、そんな余裕すらなくなってきた感じです。特に、サイエンス業界の若い世代の内向き志向が強くなったのは想定外と言わざるをえません。世界基準を手にしたサッカー界では、どんどん若者が海外を目指して、高校生の頃からスペイン語やドイツ語や英語を自主的に勉強しているのとは対照的です。

 そういった観点から、世界基準の導入・定着が今の学会に課せられた課題と思います。interdisciplinaryなサイエンスが世界の潮流となった現在、学会は少し異分野の感がある生態学会などとのジョイント企画を積極的に導入しています。そして、今年の九州での年会から英語化へ向けての<step by step>での英語化を開始します。<日本にいながら国際学会>というキャッチコピーのもと、4日間のうち2日目を<丸ごと英語の日>にすることを目指し、すべてのシンポジウム・ワークショップを英語でプレゼン・ディスカッションして、<日本にいながら国際学会>を参加した若い世代にも体現してもらえればと思っています。もちろん、海外からの参加者もいないのに英語でやっても陳腐なので、できるだけ海外からの参加者を増やすよういろいろな仕込みもしています。プログラムとしては、海外からの参加者も年会全期間を楽しめるよう、必ず英語のセッションが何処かにはあるようにプログラムを組んでもらっています(セッションの予定表には、英語での発表がT字型に組まれているので、T字型プログラムと呼んでいます、すなわち、会期を通して(横に)英語のセッションがあり、2日目は丸一日英語という縦に英語のセッションがあります)。

 また、今月EMBOの事務局を訪ねる機会があり、将来的な合同セッション開催の可能性について意見交換をしました。今後、理事の皆さんと議論を積み重ねて、学会として具体的な将来目標を作ることで、サイエンスの中身は世界基準を凌駕し、発表は世界基準でやるという未来に進みたいと考えています。年会組織委員会および学会執行部としては、多くの会員が学会としての目標を実現していくために、今回の福岡年会から積極的に英語でのプレゼンにチャレンジしてもらうことを期待しています。

 

2019年7月
特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第21期理事長
(基礎生物学研究所)
阿形 清和