理事長からのメッセージ(2021年2月)

明日のために、その4『サイエンスの刺激が得続けられる分子生物学会を目指して』

 2年前の総会で、学会として成人式を終えた(20期を終えた)ので、学会活動の内向き議論から外向き議論へと転換を図ろう、と新理事長の就任挨拶で述べました。そして、第20期の理事会で決定した将来計画の申し送り事項(年会の開催方針 & 国際化、年会開催ルール細目)を受けて、第21期理事会では学会の国際化を推進するための「5カ年計画」を設定しました。

 学会の国際化には、①海外との連携の強化、②そのためには年会の英語によるプレゼンの推進、の2本を同時並行的に進める必要があります。しかし、へたに年会の英語化をすると年会の魅力を削る危険性もあり、周到な準備と工夫が必要となります。そこで打ち出したのが「5カ年計画」でした。それは会員に対して、国際化へ舵を切るが会員の総意を汲みながら国際化をする、というメッセージを込めたものでもありました。

 具体的には、EMBOとの国際連携を手始めとし、それに向けて年会におけるEMBOとの交流ワークショップや若手交流プログラムの検討を行いました。昨年の2月にEU連合の大使館であるヨーロッパ・ハウスでMBSJ/EMBOの合同シンポを行い、昨年の年会でEMBOとのサテライト・ワークショップが実現されました。また、EMBOフェローシップの日本国内での広報を積極的に行いました。また、韓国の分子細胞生物学会(KSMCB)との連携協定の模索を開始し、2019福岡年会・KSMCB2020大会(オンライン開催)・MBSJ2020 Onlineでお互いの執行部レベルでの交流を開始しました。さらに、アメリカの細胞生物学会(ASCB)との連携企画を来年の年会(深川年会長)から開始することになりました。

 それらの動きと連動する形で、2019福岡年会から佐々木年会長と組織委員会のご協力を得て、T字型プログラムを組み込むようにしました。海外からの参加者が年会に参加しても、年会期間中は必ずどこかで英語の魅力的なセッションが聞ける(T字の横棒に相当)ようにし、また年会2日目はシンポやワークショップのみならずポスターもできるだけ英語プレゼンのものを集めて(T字の縦棒に相当)、日本にいながら国際学会に参加しているようにすることを目標としました。昨年末のMBSJ2020 Online(上村年会長)では、シンポジウムとワークショップはすべて英語で開催されました。今年の年会(横浜、塩見年会長)でもT字型プログラムで行う予定です。年会への海外参加者の絶対数および割合とも確実に増えて、日本人しかいないのに英語で年会をやる陳腐さを払拭するとともに、世界のフロントラインの研究と接する機会が増え、最新情報が得られる分子生物学会の良さをさらなる高みへと導くことを推進しています。

 日本の学会で国際化を進めていくことは至難の業ですが、日本分子生物学会のチャレンジはこれからも続いていくものと思っています。至難の業を遂行するために、「5カ年計画」に当たる各年会長には執行部に入ってもらい一貫性のある体制を構築しました。さらに国際化担当幹事として林茂生会員を指名して執行部に入ってもらい、「5カ年計画」の5年目の年会は林さんに年会長の大役をお願いした次第です。毎年の年会の後のアンケートでこれらのチャレンジへの会員からの意見を集約して、次年の年会へフィードバックをかけ、5年目に一区切りつけて、学会としての今後の在り方を会員へ諮りますので、すべての会員の総和として国際化へ取り組めればと思います(それくらいの覚悟がないと国際化はできないと思います)。

 これから第22期の理事会へと引き継いでいくことになりますが、第21期で踏み出した国際化へのチャレンジが、会員にとって永続的な魅力を提供できる学会へと進化していくことのきっかけになってくれればと切に願うものであります。

2021年2月
特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第21期理事長
(基礎生物学研究所)
阿形 清和