会員のみなさまへの第13期会長からの手紙

第13期の学会長としてのご挨拶を申し上げます。

 日本分子生物学会は本年12月で創設以来25年を迎えます。1978年に約600名の会員でスタートした本学会は今では会員数13,000名を超える日本有数のマンモス学会となりました。規模は大きくなりましたが、旧来の生命観を一新する分子生物学という新しい学問に寄せた学会創設時の研究者達の思いは今も脈々と受け継がれています。学問の新しい流れに大胆かつ柔軟に取り組む、形式ではなく実質を重んずるといった気風が本学会の大きな特徴であり、それが年会の賑わいや、学会誌Genes to Cellsの国際的評価の支えとなっていることはご存じのとおりです。しかしまた、よく指摘されることですが、学会の組織・運営はこの25年間基本的に変わっていません。21世紀における分子生物学のさらなる発展にむけて、学会の構造に見直しが望まれる部分が生じていることも事実であろうと思います。今期の執行部に課せられた課題の一つは、現在の規模にふさわしい学会組織・運営のあり方を探り、その方向に向けて動き出すことであろうと考えます。そのため、前期には組織されなかった将来計画委員会を今期は復活し、こうした点を活発に議論していただきたいと考えています。

もちろん日本分子生物学会がこれまでに何も変えてこなかったということはありません。我が国からの分子生物学の発信手段としてのGenes to Cells誌の発刊を発議検討し、7年前にそれを実現させたことはその代表的なものです。また今日では当然のことながら、広報幹事の努力でホームページの整備が進み、会員への情報伝達は印刷された会報からインターネットへとその中心が移っています。学会行事としては前期の小川会長時代に新たに春季シンポジウムがスタートしました。盛岡での第1回、広島での第2回、そしてこの5月に米子で開かれた第3回のいずれも、盛況かつ充実したシンポジウムが繰り広げられました。年会が大規模になって限られた場所でしか開けなくなったことの埋め合わせと、その時々の分子生物学の先端の動向をまとめて聞くことのできる好機ということで、春季シンポジウムの存在意義は定着してきたようです。さらなる発展をこれからも応援していきたいと思います。

 将来に目を向けると、3年後の2006年6月に京都で開かれる「第20回国際生化学・分子生物学会議」を日本生化学会とともに担当することになっています。まだ最終的に詰められてはいませんが、この国際会議にどのように関わるかということが、本学会の2006年の年会のあり方に影響をおよぼす可能性が生じています。この問題については将来計画委員会を中心に審議を進め、2006年の行事日程がどのようになるか、できるだけ早期に会員の皆様にお知らせしたいと考えています。

 もう一点、評議員選挙制度についても見直しを進めたいと考えます。前々期の柳田会長の時代に、構成員の意見分布を少しでも正しく学会運営に反映できるように、評議員の数が20名から30名に増員されました。その結果、評議員の世代若返りなど、好ましい効果が得られました。しかし今回の評議員選挙では、選出された方々に予期しなかった所属・分野の重なりがありました。評議員会では、投票率の低さがその大きな原因であるとして、何らかの対策を取る必要性が指摘されました。開票記事にあるように、評議員選挙の投票率は3%にしかすぎません。低投票率の原因はいろいろと考えられ、創設時と同じ直接選挙で、今や一万人近い正会員の中から10名を選ぶことにテクニカルな無理があるという説、会員が本学会に対して求めているものが選挙とは結びつかないという説など、もっともなご指摘があります。これまで評議員選挙が論議の俎上に上ったことはほとんどありませんでしたが、現在の選挙制度の弱点をどのように是正していくか、真剣に議論を進めたいと考えます。

 自由で溌剌とした日本分子生物学会の気風はあくまで守り抜きながら、いっぽうで成熟した学問としての分子生物学に課せられてくる社会的責任にもきちんと対処できる学会組織を構築するという、やや撞着含みの方針で今期はことに臨んで行きます。会員の皆様のご支援なしには何事も進みませんので、ぜひともご協力を賜りたく思います。学会運営について、忌憚のないご意見、ご鞭撻をお寄せ下さるようお願いいたします。

山本 正幸(第13期日本分子生物学会 会長)