日 時:2013年3月30日(土)13:30~17:20
場 所:東京国際フォーラム G棟410
出席者:大隅典子(18期理事長)、小原雄治(副理事長)、中山敬一(副理事長)、荒木弘之(広報幹事兼)、五十嵐和彦、上村 匡(編集幹事兼)、大隅良典、岡田清孝、後藤由季子、相賀裕美子、塩見美喜子、篠原 彰、高橋淑子、月田早智子、町田泰則、山本正幸、渡邊嘉典、 郷 通子(監事)、石野史敏(庶務幹事)、本間美和子(庶務幹事)、金井正美(広報幹事)、以上21名
欠席者:阿形清和、石川冬木、一條秀憲、上田泰己、近藤 滋(第36回年会長兼)、佐々木裕之、島本 功、田中啓二、長田重一、西田栄介、花岡文雄、三浦正幸、山本雅之、永田恭介(監事)、武田洋幸(集会幹事)、以上15名
事務局:福田 博(記録)、並木孝憲、丸田夏子
本理事会成立について:
石野史敏庶務幹事より、理事17名、監事1名、幹事3名が出席し、委任状15名(理事13、監事1、幹事1)を受理しており、本理事会は細則第4章第8条により成立する旨、報告された。
議事録署名人の選任について:
大隅典子理事長より、議事録署名人として、五十嵐和彦理事と高橋淑子理事が指名され、承認された。
議 事:
1.論文不正問題の件
(1)小原雄治研究倫理委員長より、加藤論文問題に関する現在までの経過状況概要について報告がなされた。各理事の情報共有のため、資料(昨年末、東大、筑波大へ提出した要望書・質問書)の説明が行われ、その後の両大学の対応状況につき、口頭による説明が行われた。
(2)研究倫理委員会報告
2月11日に第1回標記委員会を開催したことが報告された。出席者は次のとおりであった。
・研究倫理委員会:小原雄治、岡田清孝、塩見美喜子、篠原 彰、町田泰則
・陪席:大隅典子(理事長)、中山敬一(副理事長)、石野史敏(庶務幹事)、本間美和子(庶務幹事)、荒木弘之(広報幹事)
研究倫理委員会第1回会議では、情報の確認・共有、緊急フォーラム記録の公開方法、今後の学会対応、理事会に提案すべきアクションプラン、等について、活発な議論がなされたことが、小原委員長より報告された。
(3)篠原彰理事(研究倫理委員)により、今回、問題が指摘されている幾つかの論文の図が投影され、詳細説明がなされた。疑問点の確認が行われ、これらの論文の図の中には、改ざんされたと容易に判断出来るものがあり、出席理事共有の認識を持つことに至った。
(4)緊急フォーラム(第35回福岡年会にて開催)の報告(公開)方法について
大隅理事長より、標記につき、本年1月に行った17期・18期理事会の持ち回り審議結果(コメント一覧)の報告が行われた。
引き続き、小原研究倫理委員長より、研究倫理委員会としては、2月11日開催の会議での検討の結果、基本的にHP全文公開を提案したいとの報告がなされ、その後、自由討論に入った。
提出された意見は以下のようなものであった。
<※今後の業務手続き上、必要と思われる発言者のみ氏名記載>
・全文記録をあらためて読んだが、考慮すべき個人名は伏せてあり、内容についても十分に配慮されている。これを公開して特段の不利益があるようには思えない。
・全文記録では、「本日のフォーラムですが、録音させていただいております。その内容を学会HP等で公開するということも踏まえていますので、あらかじめご承知ください、」と冒頭で述べられており、公開はありうる、という前提で討論が進んだことは理解できるが、しかし、「内容を公開」という表現が、そのまますべて全文を「公開する」ということにはならない。
・17期の執行部では、事件発覚以来、福岡年会での企画を検討してきたが、東大のプロセスが予測以上に遅れたために、緊急フォーラム開催間近になっても使える材料が全くなかった。会員には、まずは対応が遅れたことを説明し、意見を聞く場にするしかなく、次の2013年会での企画につなげたい、との考えで緊急フォーラムを開催した。フォーラム内容については、前執行部も忸怩たるものがあったが、一方、会員からの意見はそれぞれに建設的なものもあったと判断している。確かに参加者は限られていたが、執行部そして研究倫理委員会としては、今後もより多くの会員の意見を吸い上げ、対応を考える材料にしていきたい。そのためにも、本フォーラムを全文公開したい。(執行部)
・基本的にこれまでも、分生のフォーラムが全文公開であった以上(杉野論文問題の時も同様であった)、“条件付き”で公開すべきである。
・日本国民だれでも、世界のだれでもが見られる内容として公開するには、ギャップが大きすぎる。
・何らかの報告は必要だと思うが、今後の方向性が明確になっていない現状で全文を公開することには反対。
・全文記録において、「Genes to Cells」の掲載論文についてもフロアから言及されているが、東大からの正式発表がない段階では、編集室といえども公式な調査作業には着手できないのではないかと考えている。また、「Genes to Cells」の学会での位置づけを充分に理解されていない会員からの発言記録も見受けられ、全文公開には反対である。(上村編集幹事)
・それは分かるが、しかし、学会として具体的に作業できる(切り込める)唯一の材料が「Genes to Cells」である。細則でも「Genes to Cells」は本会の学会誌であるときちんと明示されているので、問題はないのではないか。(小原研究倫理委員長)
・「Genes to Cells」は、創刊時から、他学会の一般的な英文学会誌(理事会の傘下に編集部が設置されるのが通例のパターンだと思われるが)とは少々異なるキャラクターを持つ。理事各位には、Genes to Cells の編集(⇒ 編集長、編集室、編集業務)は、学会(理事会)からも実質、独立していることを理解いただきたい。また、論文調査作業について依頼されたいのであれば、正式に理事長から編集長あてに、しかるべき手順を踏んでもらいたい。(上村編集幹事)
・上記の手続きについては、承知した。(大隅理事長)
・Genes to Cells の編集の独立性に関する、会員向け説明については、〝編集室からのコメント〟といった形で、別掲(注釈)を付けることで対応し、そのような方法であれば全文公開に支障はないのではないか。(石野庶務幹事)
・一般論であるが、このような論文問題は責任はあくまで著者にあり、理事会や編集委員会に責任はないことを確認しておきたい。
・全文についても、理事会の見解ではなく、これはあくまで記録であることの注釈を出したらどうか。しかし、注釈だらけの記録公開になってしまうが。
・準備不足、まさに緊急に開いたフォーラムであったことに原因があり、発言は執行部の総意を取りまとめたものとはなっていない。この全文を読んでも学会の姿勢は読み取れない。
・意見交換の部分は、執行部対応についてのやり取りが多く、今後の学会の方針・方向性を示すには至っていない。現状のテープ起し形式で公開してしまって、あたかも学会の総意に近いものとして受け取られる事になるので、全文公開には反対である。
・参加者が少なかったとはいえ、このフォーラムは分生会員ならば全員が出席可能な場であった。そこで公開討論された内容(事実)であるので、会員専用ページを設けて限定公開としたらどうか。
・合理的な対応は東京大学の調査で事実関係が確定してからになるので、学会としてはその調査結果に基づいて反省点を探り、〝将来に向けた対策を打ち出すことを確約する〟ことが重要である。
・誤解を与えかねない全文掲載ではなく、開催の趣旨と発言の要旨を簡潔にまとめたものをHP掲載報告とし、さらに理事会(理事長)または執行部の考えを、声明として出したらどうか。
・公的研究費による会員の研究不正が疑われる時、調査が完了するまでの時間を待たずに、調査などが始まったら、できるだけ早く、学会としての発信(声明)を行い、研究者集団としての真摯な姿勢を社会に伝えることが重要だ。
・理事長はじめパネリストの発言が理事会の総意を表すものではないことの〝注釈〟をつけるなどの工夫をしたのち、全文を読めるようにしたらどうか。
・全文を読むことで当日の状況が伝わってくる。こういった臨場感は、要約では決して得られない貴重なものである。準備不足、議論が深まっていないとの意見があるが、それは実施する前から予測出来たことであり、それでも敢えてフォーラムを開催したのはなぜか、「沈黙することは、最悪のメッセージである」という前執行部の見識があったからである。事実をきちんと述べ、謝罪すべき点は謝罪し、しかも毅然と対応されていたことが、この全文を読むことで初めて伝わってくる。要約では決して得られないと思う。
・以前、私が理事長に就いていた2年間には、この件は結局発覚しなかった。しかし、この問題はずいぶん昔からあり、これはおかしいと思った人も多分たくさんいたはずであり、その声が外に出てこなかったことにも問題がある。こういった問題を吸い上げる仕組みがこの学会になかったことも大きな1つの問題(課題)である。
・学術会議の「科学者の行動規範」(本年1月に改訂)をぜひ読んでほしい。
・このような問題が起きたときには、大学での処分の問題とは別に、サイエンス部分については、事実をはっきりさせるよう、各大学に働きかけを行う必要がある。
・ネイチャー、サイエンスがすべてといった、今の風潮があまりにも問題である。
・名古屋大と阪大にはeラーニング(科研費申請・執行のため、年2回20問ほどに答える)のシステムがある。論文に関しても同様の制度が導入されるとよいだろう。各大学での実施が徹底されるよう、学会が働きかけを行う必要がある。
・①防止策と②提言(いずれも前向きなアクション)、そして③反省(なぜこのようなことが起きたか)の3つを盛り込んだ理事会声明を作成したらどうか。
以上、活発な意見交換が行われたが、緊急フォーラムの全文公開の仕方については、その発信の時期および学会HPの会員限定ページ上に置くかどうかなどを含め、結論には至らなかった。
審議の結果、本日提出された様々な意見を参考に、執行部において「理事長報告」および「理事会声明」(案)を作成し、会員の本事案への充分な理解を目指すこととなった。
緊急フォーラム全文記録には注釈(編集室からのコメント:GTCの編集の独立性に関する説明)を付けることとなるが、
(ⅰ)編集長への正式な調査協力依頼。
(ⅱ)編集室からのコメント(注釈)を付けることで編集長からも全文公開の了解を得たい。
の2点については、大隅理事長が柳田充弘編集長に相談・依頼することとなった。
本件については、「理事長報告」および「理事会声明」の承認を含め、準備が一式整った時点で、あらためて、理事会持ち回り審議に諮ることとなった。
(5)理事会企画「研究不正の防止を目指すフォーラム」について
小原研究倫理委員長より標記資料(企画趣意書・企画の概要)が配付され、詳細説明がなされた。提案内容は次のとおりである。
〇「企画趣意書」(資料抜粋)
近年急速な進展を遂げたライフサイエンスの中で、数多くの研究不正(ねつ造、偽造、盗用)が散見されている。このような不正は、研究者のモラルのハザードに直結し、結果としてサイエンスの生産性や科学者の地位の低下を招いており、極めて深刻な事態である。
その一方で、本来この問題を速やかに処理すべき機関等の動きは非常に鈍いと言わざるを得ない。今回の案件においても、東大が委員会を立ち上げ調査を行っているという報道が有る一方、1年以上が過ぎても正式なアナウンスは無く、不正の全容が未だに明らかになっていない。
このような現況を踏まえて、2013年の年会では、より実効性のあるフォーラムを企画する。具体的には、今回の東大分生研の不正問題をモデルケースの一例として議論を拡張し、当該研究所、掲載ジャーナル、研究費を与えた機関などから関係者をゲストに招いて、我々の研究システムの問題点を取り上げ、どのようにすれば改善できるかを話し合う。さらに、その議論をまとめ、今後の研究不正問題への指針となる資料を作成することを目指す。
〇「企画の概要(暫定案)」(資料抜粋)
①小(中)会場を使い、3日間でテーマ別に最大6セッション(90分×6テーマ)を行う。
②各セッションのテーマに合わせて、関係者であるゲストを招く。ゲストの選定等は倫理委員会が行い、正式の参加要請は、分子生物学会理事会または理事長名で行う。
ジャーナルの立場から
Funding agencyの立場から
研究機関の立場から
若手研究者の立場から(PIを含め、広く、若手からの意見を集める)
加藤研関係者あるいはご本人(是非来てもらいたい)
③最終日の午後に大会場において、理事長、あるいは研究倫理委員長が各セッションの要約を報告
④各セッションの座長は理事2名が行う。倫理委員会がテーマに合わせて座長を指名。
・どうすれば今後研究不正を防げる(減らせる)のか、という建設的な議論としたい。
・年会に先立ち、各セッションで議論する項目・ゲストへの質問などを会員に公募(アンケート)する。
・プロのサイエンスライターに内容をまとめてもらい、書籍化が行えれば理想的である。
引き続き、小原研究倫理委員長より本企画作成の経過につき、以下の報告がなされた。
<2月11日、研究倫理委員会にて>
・研究不正問題フォーラムを第36回年会で行う事を決定。
・前年度に多くの会員が来られない時間帯で行い批判を受けた事を勘案し、年会参加者全員が集まれる時間帯・会場を用意してもらう事を近藤滋第36回年会長に、大隅理事長から要請。
<近藤年会長から研究倫理委員会への返答と提案>
・他の学術イベントを全て止めて研究不正フォーラムを行うのは、プログラム委員会の企画を大幅に変更する必要があり不可能。
・ランチョンセミナーを1日つぶすのは、この件に関して全く当事者でない企業に不便を強いることになり、対応は不可能である。
・大会場で短時間のフォーラムではなく、逆に、小(中)会場を使い、ロングランで行うのはどうか。
<研究倫理委員長が中心となり年会長案を検討>
・小会場ロングラン方式は十分に時間をかけて議論できる。
・学術プログラムへの影響が少ない。
・関係者を招くことにより、深い議論が可能。
以上からこの方式にメリットがあると判断し、暫定案を作成した。
審議の結果、本理事会企画案「研究不正の防止を目指すフォーラム」は承認され、引き続き、研究倫理委員会が中心となって、開催準備を進めていくこととなった。
2.細則改正の件
昨年12月開催の理事会にて、三菱化学(株)からの日本分子生物学会三菱化学奨励賞へのサポート(副賞ほか)が終了となり、2012年度をもって同奨励賞の授与が取りやめとなったことは報告済みであるが、それに伴い、細則の関係条文を改正することが必要である旨、大隅理事長より説明がなされた。
細則改正案が配付され、第12条の条文「この法人に、特定非営利活動法人 日本分子生物学会三菱化学奨励賞を設ける。本賞の要項については別に定めるものとする。」を削除し(項目の抹消)、旧13条以降を順に、12からおくり直すこととし、細則は改正された。
3.ホームページ対応について
(1)学会HP・人材公募ページにて多数の求人情報を掲載しているが、従来、民間企業からの求人情報(方法は先方の求人サイトへのリンク)は、賛助会員に限ってきた(2001年12月の評議員会決議による)。今回、賛助会員ではない民間企業2社からの求人情報・掲載依頼があったことが大隅理事長より報告され、その対応方法につき、意見交換が行われた。
討議の結果、以下を決定した。
①民間企業からの求人情報掲載については、今後も賛助会員に限ることを原則とする(当面、掲載料は取らない)。基本的に、研究者、技術者の求人を想定しているが、キャリアパスの観点からみて、さらに広い職種でも対応できるように、運用(掲載の諾否)については、広報幹事の判断で柔軟に対応できることとする。
②従来の賛助会員求人サイトの構成がやや分かりにくいので、今後は人材公募ページに統合し、賛助会員の求人情報については、リンク協力だけでなく依頼元から入手した原稿(情報)を掲載することとした。
③非会員企業からの掲載依頼に対しては、賛助会員としての入会を勧めるか、もしくは適当額の掲載料を徴収し対応する等、引き続き、広報幹事が検討し、その運用に関しても広報幹事に一任されることとなった。
(2)日本医学会総会(2015年)事務局より広告用バナーの掲載依頼が入ったことが、大隅理事長より報告された。関連のシンポジウム情報など、テキストによるHP掲載は多種に亘り既に対応しているが、トップページへの画像バナー掲載協力は前例がないことが事務局より説明された。
検討の結果、画像バナー掲載はお断りし、通常形式での広報協力(該当ページでのテキスト掲載・リンク協力)を医学会総会事務局へ回答することとした。
4.その他
塩見美喜子理事(キャリアパス委員会委員長)より、第35回福岡年会では、シンポジウム・ワークショップの女性オーガナイザーの比率が、会員の女性比率に比べ、非常に低かったことが報告された。第36回年会では善処してほしい旨が申し送られた。
本件については、大隅理事長からも、近藤滋第36回年会長、武田洋幸年会組織委員長あてに要望の依頼がなされていることが報告された。
上記、第18期第2回(臨時)理事会の議決および確認事項を明確にするため、この議事録を作成し、議事録署名人はここに記名押印する。
2013年3月30日
特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第18期第2回(臨時)理事会
議長 | 大 隅 典 子 |
議事録署名人 | 五十嵐 和 彦 |
議事録署名人 | 高 橋 淑 子 |