特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第23期第2回理事会記録

日 時:2023年12月5日(火)14:00~19:10

場 所:神戸国際会議場 4階「403」

出席者:後藤由季子(理事長)、見學美根子(副理事長)、塩見春彦(副理事長)、阿形清和、大谷直子、岡田由紀(庶務幹事兼)、鐘巻将人、加納純子、木村 宏(広報幹事兼/2024年会長)、胡桃坂仁志、小林武彦(2025年会長)、斉藤典子、杉本亜砂子、中山敬一、二階堂 愛、濡木 理、三浦恭子、水島 昇(2026年会長)、柳田素子、塩見美喜子(監事)、東山哲也(会計幹事)、上村 匡(編集幹事)、林 茂生(2023年会長)、篠原 彰(生命科学教育担当)、以上24名

欠席者:小安重夫、白髭克彦、高橋淑子、中川真一(庶務幹事兼)、中島欽一、中西 真、仁科博史、深川竜郎(国際化担当幹事兼)、三浦正幸、吉田 稔、吉村昭彦、佐々木裕之(監事)、以上12名

事務局:並木孝憲(記録)、金子香奈里、福田 博、山口恵子
 

本理事会成立について:
 岡田由紀庶務幹事より、理事19名、監事1名、幹事2名、年会長1名、議題関係者1名が出席し、委任状11名(理事)を受理しており、本理事会は細則第4章第8条により成立する旨報告された。

議事録署名人の選任について:
 後藤由季子理事長より、議事録署名人として、加納純子理事と二階堂愛理事が指名され、承認された。
 

議 事:

1.報告事項
 

1)執行部報告

・理事長報告
 後藤理事長より、明日からの第46回神戸年会開催に際し、これまで準備にあたった林茂生年会長ならびに年会組織委員会への謝辞が述べられた。
 分子生物学会における社会的な責任として、第23期執行部においては、情報発信、国際対応、ダイバーシティ(ジェンダー、地方など)、高校教育、資産運用、科研費問題の6課題について重点的に議論していることが報告された(詳細は各関連議題にて)。

・会員現況
 岡田庶務幹事より、2023年11月1日現在の会員数につき以下のとおり報告された。

名誉会員0名
正 会 員7,876名(海外在住159含む)
シニア会員103名
次世代教育会員15名
学生会員4,035名(海外在住52含む)
賛助会員23社 
合 計12,052名(前年11月対比、+260)

(*上記以外に所定の手続きによる休会者58名あり)

・生物科学学会連合について
 岡田庶務幹事より生科連の2023年の活動状況につき説明された。

・ホームページとSNSについて
 木村宏広報幹事より、学会ホームページとSNSの運用状況について説明された。ホームページについては大幅なリニューアルを検討する時期にきていると考えられるものの、学会の財政基盤を安定化することが優先であろうとの意見が述べられた。
 分子生物学会では2013年よりFacebookを運用しているが、第45回(2022年)幕張年会で積極利用されたTwitterに大きな反響があったことを受け、学会公式X(旧Twitter)アカウントを開設して情報発信することとなった。その後、理事会においてSNS利用のメリット・デメリットなどが整理され、「ソーシャルメディア運用ポリシー(SNSガイドライン)」および「SNS運用マニュアル」の承認を経て、2023年4月よりXを運用している。

2)海外との連携について
 深川竜郎国際化担当幹事に代わり、木村広報幹事よりCell Bio 2023におけるASCB-EMBO-MBSJのJoint International Workshopの紹介がなされた。本セッションには、今期理事会からの推薦により、清光智美会員(OIST)と茂木文夫会員(北大)がMBSJの代表スピーカーとして参加したことが報告された。

3)第46回(2023年)年会準備状況
 林茂生第46回年会長より、配付資料に基づき準備状況の詳細報告がなされた。本年会は、コロナが再拡大するような万が一の事態への備えと、会場に来られない方にも年会に参加する実感を体験してほしいとの考えから、オンライン先行開催+現地開催というフォーマットを採用した。事前参加登録は4,319名(オンライン視聴のみは事前・後期の区分がないため11/15時点の数値)、発表演題数は3,567演題とコロナ前の規模にほぼ戻ってきた状況にあり、年会収支に重要な協賛収入も順調であることが報告された。
 プログラムとしては、指定シンポジウム10テーマ(すべてオンライン実施)、公募シンポジウム115テーマ(うち8件はオンライン実施)、フォーラム19テーマ、ポスター2,877題(一般演題2,257題、LBA620題)、サイエンスピッチ541題、高校生研究発表は現地45題(口頭+ポスター26題、ポスターのみ19題)とオンライン17題となり、その他の年会特別企画として以下を準備した。明日からの年会運営に際し、理事各位のご協力をお願いしたい。

・MBSJ-EMBO合同企画ランチョンセミナー

・Poster Clinic by EMBO Press

・サイエンスイラストレーターの仕事紹介(ポスター展示)

・MBSJ2023 Science Pitch Award(このうち、Top4演題にはEMBO Awardも贈呈)

・神戸スイーツコーナー / 灘五郷の日本酒 飲み比べコーナー

4)第47回(2024年)年会準備状況
 木村宏第47回年会長より、2024年の年会準備状況につき報告がなされた。

○会期:

(オンライン開催)2024年11月26日(火)※希望ポスター発表者のみ
(現地開催)   2024年11月27日(水)~29日(金)の三日間

○会場:福岡国際会議場、マリンメッセ福岡A館・B館

○演題登録期間:2024年7月1日(月)~31日(水)※予定

○事前参加登録期間:2024年7月1日(月)~10月1日(火)※予定

○組織委員:年会長木村 宏(東京工業大学)
副年会長粂 昭苑(東京工業大学)
組織委員長岩﨑博史(東京工業大学)
プログラム委員長松浦友亮(東京工業大学)
組織委員岩崎由香(理化学研究所)、三浦恭子(熊本大学)

 研究に対する議論は対面が最も効果的であると思うが、オンラインにはどこからでも参加できるメリットがあることから、本年会は多様な形態で参加できる開催フォーマットを採用した。
 福岡の現地開催の前日(11月26日)に、オンラインのポスター発表を複数の時間帯に設け(午前・午後・夕方など)、時差のある海外からも発表できるように準備を進めている。口頭発表は全てハイブリッドで行うため、特定の講演会場に入らずとも、オンラインで参加して複数のシンポジウムを行き来することも可能である。また、できるだけ最新データを発表していただけるようにするため、オンデマンド配信は行わないこととした。現地でのポスター発表に関してもライブ配信は行わないこととした。
 シンポジウムについては、指定企画の数を7テーマに絞り、若手の発表機会をさらに増やすべく、公募企画として150分枠のシンポジウムと90分枠のミニシンポジウムを募集する。分子生物学会のような年会では、広い範囲の分野から研究者が参加して異分野融合が進むことが利点のひとつであり、比較的小規模の研究会や関連学会からのミニシンポジウムの企画を期待している。分子生物学会の会員にも会の活動を広く紹介することを兼ねて、是非ミニシンポジウム企画を提案していただきたい。
 その他の開催方針について以下の説明が行われた。

・一人一演題の制限を適用する。

・指定演者のうち70%以上を特定のジェンダーとしないよう構成を依頼する。

・講演言語はオーガナイザーに一任する(英語または日本語のみに統一)。

・ポスター発表において優秀ポスター賞の表彰を実施する。

・年会最終日に高校生発表と市民公開講座の実施を予定している。

5)第48回(2025年)年会準備状況
 小林武彦第48回年会長より、2025年の年会準備状況につき報告がなされた。

○会期:2025年12月3日(水)~5日(金)の三日間

○会場:パシフィコ横浜

○組織委員:年会長小林武彦(東京大学)
組織委員長平田たつみ(国立遺伝学研究所)
プログラム委員長沖 昌也(福井大学)
組織委員倉永英里奈(東北大学)、中山潤一(基礎生物学研究所)

 開催方針について以下の説明が行われた。

・日本の研究力低下の責任の一端を担っていると考え、総合力として科学を振興する企画等を検討する。また、参加者間の様々な形の出会いのきっかけを作る場とする。

・国際化推進のために、本年会においても、海外企画を実施したい。

・研究者自身がPRする場を設けて、共感、好感をもてた方とその研究者とをつなぐ橋渡しになるような仕組み(マッチング企画)を検討する。

・シニアサイエンティスト(退官された先生方)にご参画いただく企画を検討する。

・オンサイト開催を中心とした形式を念頭に、第47回(2024年)福岡年会の状況をみながら、継続すべきものは本年会にも取り入れていきたい。

6)第49回(2026年)年会準備状況
 水島昇第49回年会長より、2026年の年会準備状況につき報告がなされた。

○会期:2026年12月1日(火)~4日(金)の四日間

○会場:パシフィコ横浜

○組織委員:第49回日本分子生物学会年会 年会長水島 昇(東京大学)
第99回日本生化学会大会 会頭胡桃坂仁志(東京大学)
プログラム委員長後藤由季子(東京大学)
庶務幹事/プログラム副委員長東山哲也(東京大学)
庶務幹事/プログラム副委員長東原和成(東京大学)

 開催方針について以下の説明が行われた。

・プログラムの統一性をもたせるため、プログラム委員長は1名とした。

・プレナリー講演は行わず、世界トップの様々な分野のスピーカーをオムニバス的に並べる企画を検討する。

・トップダウンの企画シンポジウムでなく、できるだけボトムアップの公募シンポジウムとなることが望ましい。

・若手研究者の積極的な参加を求める。プログラム委員は優秀な若手研究者から構成することを検討する。

・国内外の学協会との連携について、国内は現時点では分生、生化にとどめ、海外はEMBO、ASCB、ASBMBとの連携として、冠シンポジウムあるいはレクチャーを企画することを想定している。

・ダイバーシティに配慮したオーガナイザー、演者構成とする。

・オンサイト開催を前提とし、オンデマンド等については予算等の状況をみて検討する。

7)学会誌『Genes to Cells』編集報告
 上村匡編集幹事より、配付資料に基づき報告が行われた。
 Genes to Cellsは投稿料・掲載料が無料で、かつ(収載された号の出版日から起算して)6ヶ月経過後は論文が無償公開となる。Wileyとの転換契約に参加する大学が増えるなど、オープンアクセス出版の助成を受けられるケースもあるため、分子生物学会の会員割引と合わせて即時OAの各種割引に関する周知を行なっている。
 続いて、分子生物学会の公式X(旧Twitter)アカウント開設に伴い、希望者を対象に、SNS(X・Facebook)による著者コメントの発信を始めたことが報告された。また、投稿数ならびにpaper millと思われる論文の状況説明と、ジャーナル出版におけるMetricsが示された。12月号のコンテンツメール配信時に、2023年に投稿いただいた総説を再掲するとともに、会員各位に積極的な引用協力を呼び掛けたい。
 現在Genes to Cellsでは、論文の校了後まずはEarly Viewとして出版、その後Issueに収載する論文をすべて確定させ、ページ番号を付与したうえでIssueを出版しているが、Wileyでは、校了となった論文がそのままダイレクトにIssue内で出版される“Continuous Publication”への移行を全ジャーナルに適用することが決定している。Genes to Cellsも2025年から“Continuous Publication”へ移行するため、コスト面もふまえて年間のIssueの数(3回・4回・6回など)を検討していく。
 第46回神戸年会の最終日(12月8日)に、年会特別企画として「あなたの論文はどこへ行く:論文出版とオープンサイエンスに関する対話」と題したランチョンセミナーが予定されている。学術出版における購読料が年々上昇し、オープンアクセス論文の出版費用も高騰を続けていることは理事各位にも重要な問題として捉えていただきたい。
 本年会の展示会場にて、今年も3年分のカバーアートタペストリーを展示している。2023年4月号と9月号は、分子生物学会の国際会議支援事業で助成した国際会議をモチーフにデザインしており、ぜひ多くの方にご覧いただきたい。

8)各種学術賞、研究助成候補への学会推薦状況について
 斉藤典子賞推薦委員長より、2023年に本学会より推薦した各種学術賞について報告がなされた。引き続き、杉本亜砂子研究助成選考委員長より、2023年の研究助成推薦状況と結果等について報告が行われた。各財団で女性の応募を奨励する取り組みが行われているものの、全体としてまだ応募が少ないように思われる。理事各位には、女性候補者への積極的な声かけをお願いしたい。

9)キャリアパス委員会報告

・胡桃坂仁志キャリアパス委員長より、配付資料に基づき委員会の活動内容が報告された。本年会においては、Ph.D.の魅力を伝えることをメインテーマとして、以下2企画のランチョンセミナーを開催するので、理事各位には積極的に参加いただきたい。

Part1.「事前アンケートから考える:人生の選択肢を増やすためのPh.D.」(会期初日/12月6日)

Part2.「博士についてのお悩み解消!~Ph.D.の価値と可能性について~」(会期二日目/12月7日)
(*1の事前アンケート(2023.8.7-28)には662名の回答を得た)

・分子生物学会は男女共同参画学協会連絡会(連絡会)の設立当時から正式加盟学協会として活動に参加してきた。2018年にはオブザーバー加盟学協会へ移行して連絡会への協力を続けてきたが、2023年11月までに正式加盟への再移行あるいは退会の選択を余儀なくされた。キャリアパス委員会で検討した結果、「退会が望ましい」との答申を行い、理事会執行部の賛同を得て理事会メール審議が行われ、2023年7月25日付で承認された。その後、11月1日付で連絡会のメーリングリストより解除された旨の通知をもって退会の受理を確認したことが報告された。
 連絡会からの退会は、連絡会業務を担当するキャリアパス委員のエフォートに比して生命科学系特有の課題に特化した活動が難しい点などから今回の決定に至った。退会によって本学会がダイバーシティ推進に対し後ろ向きになるということは全くなく、これからも学会独自にできる取り組みを続けていく所存である。

・第46回年会における属性調査結果より、「バランスの取れた研究環境を築くために~年会における演題発表者等の属性調査~(女性比率の推移表)」が作成され、学会HPでも公表している。本学会会員の会員種別別の男女比率、発表者(シンポジウム、ワークショップ、一般演題)が決まるプロセスの違い、等々について詳細説明がなされた。本年会では、公募シンポジウムの企画公募で募集要項に「指定演者のうち30%程度を女性講演者とすることを応募条件とする」ことが記載されたこと、公募シンポジウムスピーカーの女性比率が40%を超えたことなどが報告された。

・分子生物学会において、草創期の男女共同参画活動を牽引してこられた大坪久子氏が7月30日に逝去された。本学会で2001年に初めて設置されて以来現在まで続く年会託児室をはじめ、分子生物学会の男女共同参画は大坪氏の尽力によるところがきわめて大きい。同氏のこれまでの活動に敬意を表するとともに、哀悼の誠が捧げられた。

10)研究倫理委員会報告
 小安重夫研究倫理委員長に代わり、二階堂愛座長より今年の研究倫理フォーラムの内容について報告が行われた。

○研究倫理委員会企画・研究倫理フォーラム
「生成AIと科学研究: 共創の未来を目指して」(会期初日/12月6日)

 今年は、生成AIが研究倫理に与える影響についての企画を検討し、自然言語処理の第一人者である東京工業大学の岡崎直観氏を講師に迎え、近年の大規模言語モデル(LLM)の発展や、科学論文とLLMの関係について議論することとした。AI自体がどのような原理で動いているのか、AIには何ができて何ができないのかなど、基本的な理解を深めることは非常に重要であり、研究に利用できるものを知るきっかけになることを期待したい。
 岡崎氏の講演終了後、二階堂愛委員(座長)、大谷直子委員、三浦正幸委員、後藤由季子理事長の登壇により、パネルディスカッションを行うので、理事会関係者においてもぜひ参加いただきたい。

11)国際会議支援・選考委員会報告
 小林武彦国際会議支援・選考委員長より、第12回目(2024年)となる国際会議支援についての選考結果が報告された。本年の応募は7件で、選考委員会における慎重な審査を経て、理事長承認のもと、以下の4会議(計400万円)が採択された。

≪会議名称≫
(和文)2024アジア太平洋ショウジョウバエ神経生物学会議
(英文)2024 Asia Pacific Drosophila Neuroscience Conference

開催責任者:鈴木崇之(東京工業大学生命理工学院・准教授)
会期:2024年2月27日(火)~3月1日(金)
会場:理化学研究所 和光地区
助成金額:100万円

≪会議名称≫
(和文)国際ゼブラフィッシュ学会2024
(英文)International Zebrafish Conference 2024 (IZFC2024)

開催責任者:岡本 仁(理化学研究所脳神経科学研究センター・チームリーダー)
会期:2024年8月17日(土)~21日(水)
会場:みやこメッセ(京都市)
助成金額:100万円

≪会議名称≫
(和文)染色体の多様な機能を制御するSMC複合体
(英文)Genome organization and diversity of SMC complexes

開催責任者:仁木宏典(国立遺伝学研究所・教授)
会期:2024年10月15日(火)~18日(金)
会場:静岡県総合コンベンション施設 プラサヴェルデ(沼津市)
助成金額:100万円

≪会議名称≫
(和文)アジア太平洋バイオインフォマティクス合同会議
(英文)Asia & Pacific Bioinformatics Joint Congress

開催責任者:岩崎 渉(東京大学大学院新領域創成科学研究科・教授)
会期:2024年10月22日(火)~25日(金)
会場:那覇文化芸術劇場 なはーと、ホテルコレクティブ
助成金額:100万円

12)生命科学教育について
 篠原彰生命科学教育担当より、2023年会における高校生研究発表会の状況、および2023年の高校などへの講師派遣について報告がなされた。 今年で12回目となる高校生発表は、例年同様、年会最終日(12月8日)のポスター時間帯に口頭発表とポスターが予定されている。理事各位にはディスカッサーとしてぜひご参加いただきたい。また、本年会オンライン期間翌日(12月2日)のオンライン高校生発表では、多くのキャリアパス委員に協力いただき、初の土曜開催も無事に実施されたことなどが報告された。

≪第46回年会における高校生研究発表会:発表件数は次のとおり≫

・口頭発表43演題(WEB17題、現地26題)・ポスター発表45演題・参加校42校

 続いて、高校などへの講師派遣に関する説明が行われ、実施件数がコロナ前に戻りつつあることが報告された。その一方で、高大連携が急速に進んでいることなどを背景に、特に都市部ではアウトリーチ活動が供給過剰な状況にあるとの意見が後藤理事長より出された。大学と連携していない都市部以外の高校への派遣や、高校教員の方々が集まる会での広報など、出席者より多様な意見が提出された。理事会での意見交換をふまえ、高校側のニーズを汲みつつ、堅実に運営していく基本方針が確認された。
 

2.審議事項
 

1)令和5年度(2023年度)決算承認の件
 東山哲也会計幹事より令和5年度活動計算書の収支について詳細説明がなされた。決算概要であるが、前期繰越正味財産額1億8,701万円に対し、次期繰越正味財産額は1億8,341万円で約360万円の赤字決算(繰越金減)となった。
 赤字となった主な原因として、昨今の物価高騰による印刷代や出力費、消耗品などの値上げによるものと、受取会費の減額があげられる。年会がコロナ前の規模に戻ってきたことで、夏の演題応募数も回復し、前年の約1割増し、1,588名の新入会があり、全体の会員数としても前年比で260名の増加となったものの、正会員種別の会費納入が250万円ほど下回った。コロナによる影響で昨年度まで赤字が膨らんでいたが(令和3年度が609万円、同4年度は1,232万円の赤字決算であった)、第45回幕張年会が黒字決算となったこと、国際会議支援事業で400万円の助成を行うなど学会の事業活動が再開できていることを考慮すると、財務の状況も復調しているものと考えられる。
 さらに、事業費の内訳表に基づき、各事業科目別の収支についても説明がなされた。
 本決算は本年10月26日に宮城秀敏公認会計士の監査を受け、さらに同年11月8日に佐々木裕之監事、塩見美喜子監事による会計監査を受け、配付資料のとおりの監査報告書が提示された。
 続いて、塩見監事より11月8日に学会事務所において、佐々木監事と共に会計監査を実施し、監査報告書に記載したとおり、帳簿ならびに会計証憑類は正確に整えられており、各金融機関の通帳と残高証明書をすべて確認し、同決算を認めたことが報告された。
 審議の結果、本決算は理事会で承認され、第46回通常総会に諮られることとなった。

2)令和6年度(2024年度)活動予算書承認の件
・東山会計幹事より、令和6年度活動予算書と同活動予算・事業費の内訳について説明が行われた。
 国際会議支援(対象は2025年開催の国際会議)については、本年同様の金額(予算400万円)で対応したい。Genes to Cellsの出版収入は、為替レートに大きな変動がないことを想定し、利益折半1,900万円+定額編集補助100万円の計2,000万円を見込んでいる。年会収支以外のその他の各種事業科目、管理費科目については、会員オンラインシステムのサーバー老朽化に対応するため(2007年以来のサーバー更新)、クラウド化の費用として約150万円を計上している以外は、前年決算の実績額をふまえ数字を反映させている。支出項目について物価高の水準が続くことを加味しつつ、第46回年会の収支が堅調であることを受け、令和6年度は法人全体として収支均衡の予算を編成したことが説明された。
 本予算案に直結するものではないが、国際的なオープンサイエンスの潮流によって、G7科学技術大臣会合(2023年5月)での声明しかり、論文とデータの即時OA化に向けた動きが加速していることから、Genes to Cells出版収入への影響などを今後さらに注視する必要性が共有された。
 審議の結果、同予算書は理事会で承認され、第46回通常総会に諮られることとなった。
・続いて、昨年11月に開催した第22期・第23期合同理事会において、出席理事より提出された以下の内容について、東山会計幹事より説明が行われた。
*「決算に関係して、出席理事の一人より流動資産(定期預金は現在5行に分けており、その合計額は1億1,600万円である)をもっと資金運用すべきであるとの意見が提出された。これについて賛否両論の意見が提出され、ハイリスク・ハイリターンの金融商品には手を出すべきではないとの意見が多数出された。現状、信託銀行との取引もあるので、事務局は投資信託の情報を集めておくこととしたい。」(第22期・第23期合同理事会記録より)
 本件について、2023年1月に執行部にて以下の手順を確認している。

1. 先ず事務局が情報を集め
2. 会計事務所(専門家)のアドバイスを受理
3. 理事長、執行部、会計幹事に報告⇒ 執行部にて検討
4. 本年12月の定例理事会に諮る

 そこで、取引のある信託銀行より提示(推奨)された(1)金銭信託商品と(2)特約付自由金利型定期預金について執行部で検討し、本理事会に諮ることとなった。分子生物学会では現在、約1億5,000万円の流動資産を保有するが、総額の1/3(5,000万円)は通常業務の出納やりくり/種々の資金移動使用で必要であり(学会会計は年間を通じて支払いが先行している)、1/3(5,000万円)は使用しない基本財産相当(災害時対応などへの備え)とし、残りの1/3(5,000万円)を運用対象と考えたことが説明された。(1)は元本保証が無く、金額も最低1億円からであることから、金銭信託商品による運用は不適切と判断、(2)特約定期の7年もの、あるいは5年ものが相応しいと考え、今回の提案に至っている。(参考:2023年10月3日時点の金利で5,000万円を特約定期で組んだ場合の満期時における利息手取り額は、7年もので約163万円、5年もので約74万円となる)
 本案を受け、昨年の理事会で資産運用に関する意見を提出した理事より「現在の投資で最も安全なのは米国債で、運用益は4.5%ほどである.繰越金の安全な運用管理は理解できるが、リスクに見合う運用を検討するなど、理事会関係者には責任感と危機感を持っていただきたい.」といった意見が出された。続いて、他の出席理事からも「為替が円高になった場合のリスクをどう考えるか.原案よりもリスク許容度を高めたプランがあるのか調べてみてはどうか.専門家集団が投資を担うHarvardと同じように考えるべきではない.未来の理事に財務的な責任を負わせることを考えると継続性という視点が非常に重要になる.ファンドマネージャーからアドバイスをもらう選択肢があってもよい.」など様々な意見が交わされた。
 審議の結果、ファンドマネージャーなど高度な金融知識を有する専門家からも意見聴取したうえで、あらためて執行部より理事会に諮ることとなった。

3)第50回(2027年)年会長について
 後藤理事長より、第50回年会については、ダイバーシティの観点、そして本学会へのコントリビューションが明らかに高い方にお願いしたいという考えから、年会長を東北大学大学院生命科学研究科 杉本亜砂子会員に依頼したいことが諮られ、承認された。
 続いて、杉本理事より挨拶がなされた。第50回という節目の年会でもあり、チームワークで鋭意準備にあたりたく、理事会関係者のご協力をお願いしたい。

4)演題発表者の属性調査における設問項目について
 年会発表者の属性調査は、毎年年会の事前参加登録/演題投稿システムに設問を載せて実施されているが、「男女の別を確認されることで傷つく方がいるため、現行の選択肢では不十分である」との指摘が会員である参加者から寄せられた経緯について、第46回年会の組織委員である岡田由紀理事より説明がなされた。
 今回の指摘を受け、第47回(2024年)年会における対応として、まず、公募シンポジウム企画応募フォーム(要件が満たされているかをどのように確認するか)について、後藤理事長と胡桃坂キャリアパス委員長の見解を勘案したうえで、木村年会長により以下のチェックボックス形式が採用された。

○ 1.オーガナイザーの理解する範囲において、指定演者のうち70%程度以上を特定のジェンダーとはしていない構成です
As far as the organizers understand, no more than approximately 70% of the designated speakers are of a particular gender.

○ 2.その他 / Others (※記述欄)

 年会の事前参加登録/演題投稿システムで発表者本人に対して属性調査を行う際、「男・女」以外の選択肢についてこれまであまり意識されてこなかったことから、どれだけ細分化するかはともかく(GRCやEMBOなどを参考にしながら)他の項目も入れる方向でキャリアパス委員会とで検討が進められてきた。ジェンダー統計やアンケート回答率など複合的な観点から示された複数の選択肢案に関し、出席者により活発な意見交換がなされた。
 審議の結果、本学会のダイバーシティへの取り組みは目標値に向かって努力している段階であること、ゆえに属性調査というモニターを継続することが何より重要であるということから、回答者自身が定義できる選択肢(記述欄)を設ける以下の案が採用された。
 1.女性 2.男性 3.自分で記述する(Self-describe) 4.回答しない

5)日本の基盤的研究が力強さを取り戻すための科研費の適正化をめざす活動について
 後藤理事長より、日本の研究力が低迷している状況と、その要因と考えられる背景について配付資料に基づき詳細な説明が行われた。基盤的研究、引いてはサイエンス全体が力強さを取り戻すため、研究者コミュニティによる署名活動なども視野に入れた執行部提案に関して議論が交わされた。
 討議の結果、イノベーションの源泉であるアカデミアにおける危機感とサステナブルな研究環境整備の必要性、支援拡大の緊急性、そして公平性の観点から「科研費の増額」にフォーカスした活動を進めていくことが理事会で承認された。今後は分子生物学会から生物科学学会連合へ提案し、そちらで議論されることとなる。
 

 上記、第23期第2回理事会の議決および確認事項を明確にするため、この議事録を作成し、議事録署名人はここに記名する。

2023年12月5日

特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第23期第2回理事会

議    長  後 藤 由 季 子

議事録署名人  加 納 純 子

議事録署名人  二 階 堂  愛