特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第23期・第24期 合同理事会記録

日 時:2024年11月26日(火)14:00~18:30

場 所:福岡国際会議場 4階「413」

出席者:第23期
後藤由季子(23期理事長)、見學美根子(23期副理事長)、塩見春彦(23期副理事長)、阿形清和、大谷直子、鐘巻将人、加納純子、木村 宏(2024年会長/広報幹事兼/24期理事長)、小林武彦(2025年会長)、小安重夫、杉本亜砂子(2027年会長)、中川真一(庶務幹事兼)、中山敬一、仁科博史、深川竜郎(国際化担当幹事兼)、三浦恭子、三浦正幸、水島 昇(2026年会長)、佐々木裕之(監事)
印は24期継続理事)
第24期
五十嵐和彦、石黒啓一郎、石谷 太、上村 匡(23期編集幹事兼)、粂 昭苑、倉永英里奈、近藤 滋、佐田亜衣子、塩見美喜子(23期監事)、中山潤一、林 克彦、原 英二、東山哲也(会計幹事兼)、吉森 保、以上33名

欠席者:第23期
岡田由紀(庶務幹事兼)、胡桃坂仁志、斉藤典子、白髭克彦、高橋淑子、中島欽一、中西 真、二階堂愛、濡木 理、柳田素子、吉田 稔、吉村昭彦、篠原 彰(生命科学教育担当)
第24期
斎藤通紀、山本 卓、以上15名

事務局:並木孝憲(記録)、金子香奈里、福田 博、丸山 謹、山口恵子
 

本理事会成立について:
 中川真一庶務幹事より、理事32名、監事1名、委任状14名(理事)を受理しており、本理事会は細則第4章第8条により成立する旨報告された。

議事録署名人の選任について:
 後藤由季子理事長より、議事録署名人として、石黒啓一郎理事と中山潤一理事が指名され、承認された。
 

議 事:
 

1.報告事項
 

1)第23期執行部報告

・理事長報告/第23期の活動全般について
 後藤理事長より、明日からの第47回福岡年会開催に際し、これまで準備にあたった木村宏年会長ならびに年会組織委員会への謝辞が述べられた。
 分子生物学会の自由でボーダレスな雰囲気を大切にしながらも、この規模の学会としての社会的な責任のなかで、急激に厳しさを増す研究環境の改善をめざし取り組んできた二年間の活動について報告がなされた。
 まず、日本の研究力改善のために科研費の増額を国に要望する活動の進捗が説明された。本件は、昨年12月の本学会第23期第2回理事会において承認され、その提案を受けた生物科学学会連合が主体となり、様々な分野の学会連合とともに要望書への賛同者を募る署名サイトをオープンし、その後、文科省で記者会見をおこない、文部科学大臣と面談・要望書を手交した。今回の趣旨は、基盤的研究費(運営費交付金等の経常資金+科研費のデュアルサポート)の増強であるが、実効性の観点から科研費増額に焦点を絞って働きかけることとした。しかしながら、日本の研究力改善のためには、基盤的研究費の増強のみならず、若手人材への支援増強、研究環境の改善など大きな課題が山積しており、これらの課題に継続的に取り組むことの重要性が示された。
 このほか、資産運用、国際対応、情報発信、高校教育、ダイバーシティ(ジェンダー、地方など)への取り組み、また、理事会メール審議による倫理要綱および年会開催ルール細目の改訂、能登半島自然災害対応についても報告された。

・会員現況
 中川庶務幹事より、2024年11月1日現在の会員数につき以下のとおり報告がなされた。

名誉会員0名
正 会 員7,740名(海外在住171含む)
シニア会員115名
次世代教育会員13名
学生会員4,164名(海外在住73含む)
賛助会員22社 
合 計12,054名(前年11月対比、+2)

(*上記以外に所定の手続きによる休会者58名あり)

・生物科学学会連合について
 中川庶務幹事より生科連における2024年の活動状況が説明された。

・ホームページとSNSについて
 木村宏広報幹事より学会ホームページの運用状況として、2024年度に450件の記事を掲載したことが報告された(昨年対比+9)。また、ホームページはデザインを含め大幅リニューアルの時期にきていると考えられることが次期への申し送りとされた。
 本学会が運用しているX(旧Twitter)のフォロワーは1,014、Facebookは2,046(いずれも2024.11.15現在)で、学会HPの更新情報や年会情報などを発信している。今後、他のSNSを運用することも検討すべきとの意見が出された。

2)第47回(2024年)年会準備状況
 木村宏第47回年会長より、配付資料に基づき準備状況の詳細報告がなされた。本年会は、現地開催の前日に、希望ポスター発表のみを対象としたオンライン開催を実施し、現地開催する指定シンポジウムと公募シンポジウム、学会企画、年会特別企画についてはライブ配信を行う。オンデマンドは希望しない発表者もおり、開催フォーマットをシンプルにすることで人件費等も抑制できるため見送った。事前参加登録者数、発表演題数、協賛収入ともコロナ前の規模にかなり近づいた状況にあり、運営全体として順調に準備が進んでいることが報告された。
 プログラムとしては、指定シンポジウム8テーマ(ASBMB-MBSJ合同シンポジウムを含む)、公募シンポジウム138テーマ、フォーラムが18テーマ、ポスターは2,962題(一般演題2,357題、LBA605題)で、うち60題はオンライン発表、高校生研究発表も39題(口頭+ポスター23題、ポスターのみ16題)となり、その他の年会特別企画として以下を準備することができた。明日からの年会運営に際し、理事各位のご協力をお願いしたい。

・研究費関連企画「科学研究費助成事業の最近の動向/特別研究員事業の最近の動向/研究費の現状と課題」

・Career Development Session「EMBO-JSPS-HFSPから若手研究者へのメッセージと奨学金制度」

・ASBMB-MBSJ合同シンポジウム(オーストラリア分子生物学会との合同開催)

・市民公開講座「生命科学の今と未来」

・サテライトイベント「EMBO Laboratory Leadership Course in Fukuoka」

・MBSJ2024ポスター賞(学生とPDを対象に審査を行い、優れた演題にはMBSJ-EMBO Poster Awardを授与)

・EMBO Meet the Editors(EMBO Scientific PublicationsのHeadであり20年以上にわたり数々の一流ジャーナルでEditorを務めてきたBernd Pulverer博士、EMBO JournalのSenior EditorであるHartmut Vodermaier博士に発表を評価いただく企画)

・MBSJ2024画像コンテスト(印象的な写真やイメージ画像を募集し、参加者からの投票で優秀賞を決定する企画)

3)第48回(2025年)年会準備状況
 小林武彦第48回年会長より2025年の年会準備状況につき報告がなされた。

○会期:2025年12月3日(水)~5日(金)の三日間

○会場:パシフィコ横浜

○演題登録期間:2025年7月1日(火)~7月31日(木)※予定

○早期参加登録期間:2025年7月1日(火)~10月1日(水)※予定

○開催方式:現地開催のみ(ライブ配信、オンデマンド配信は実施しない)

○組織委員:年会長小林 武彦(東京大学)
組織委員長平田たつみ(国立遺伝学研究所)
プログラム委員長沖  昌也(福井大学)
組織委員倉永英里奈(京都大学/東北大学)、
中山 潤一(基礎生物学研究所)

 6年ぶりに対面のみの開催となる本年会のテーマは「この指とまれ“Let’s gather here, in Yokohama!”」とした。コロナ禍でのハイブリッド開催となった第44回(2021年)横浜年会で組織委員長を務めた際、集まりたくても集まりづらい、いくつもの制限があるなかでの運営は多くの困難を伴うものであった。その後、年会へのオンラインの導入に関して議論があることは承知しているが、せっかく集まれる状況にあるので現地に集う喜びを感じてもらいたい。参加者が対面で議論することが本学会の年会の醍醐味であることから、現地開催のみのフォーマットを採用することとした。
 そこで、現地開催の利点を活かし、新しい出会いから革新的な研究のタネを作る「マッチング企画」を実施する。「○○の研究をやりたい人この指とまれ」、「留学先に悩んでいる人この指とまれ」、「招待講演者の○○先生と○○について語りたい人この指とまれ」、「科研費申請で悩んでいる人この指とまれ」、「博士課程進学で悩んでいる人この指とまれ」といった、初対面の人と知り合いになる企画を募集する。
 その他のプログラムや開催方針についても説明が行われた。

・指定シンポジウム(10テーマ)

・公募シンポジウム(約100テーマ)

・一人一演題の制限を適用

・指定演者のうち70%以上を特定のジェンダーとしないよう構成を依頼

・講演言語はオーガナイザーに一任(英語または日本語のみに統一)

・年会最終日の午後に高校生発表を実施

4)第49回(2026年)年会準備状況
 水島昇第49回年会長より2026年(日本生化学会との合同大会)の年会準備状況につき報告がなされた。

○会期:2026年12月1日(火)~4日(金)の四日間

○会場:パシフィコ横浜

○組織委員:第49回日本分子生物学会年会 年会長水島  昇(東京大学)
第99回日本生化学会大会 会頭胡桃坂仁志(東京大学)
プログラム委員長後藤由季子(東京大学)
プログラム副委員長東山 哲也(東京大学)
プログラム副委員長東原 和成(東京大学)

 開催方針について以下の説明が行われた。

・大会テーマは「共鳴~広がる生命科学~」とした。

・特別企画「スーパースターシンポジウム(仮)」を企画する。世界トップの様々な分野のスピーカーをオムニバス的に並べて講演していただく。他のシンポジウムと並列して開催する予定。

・主にシンポジウム講演を対象に会期後にオンデマンド配信を行う。

・大会最終日に市民公開講座を開催する。

・プログラム集冊子を制作する。

・生化学会との会計按分比率(合同大会の収支⇒各学会の単独会計に按分する際の比率)は過去2年間の大会参加者数と一般演題数の平均で比率を算出し、<分生68:生化32>で配分することとなった。

5)第50回(2027年)年会について
 杉本亜砂子第50回年会長より2027年の年会について報告がなされた。

○会期:2027年11月23日(火)~26日(金)の四日間

○会場:福岡国際会議場、マリンメッセ福岡A館・B館

○組織委員:年会長杉本亜砂子(東北大学)
組織委員加納 純子(東京大学)
組織委員茂木 文夫(北海道大学)
組織委員高橋 達郎(九州大学)

 開催方針について以下の説明が行われた。

・過去の年会で好評だった企画をピックアップして、そこに第50回年会を記念する何らかの企画を組み合わせる。特に今年の福岡年会の良い点をぜひ取り入れていきたい。

・ポスター発表・討論の時間を例年(演題番号奇数/偶数各1時間)よりも長くする方向で調整する。ディスカッサー制など、ポスター発表者をエンカレッジし、会場を盛り上げる仕掛けを検討したい。

・開催期間を四日間とすることにより、パラレルに行われる講演セッションを減らし、全体的にゆったりとしたプログラム編成としたい。また演者と参加者が双方気軽に集まれる雰囲気を作りたい。

・第50回記念企画については、例えば昔の学会資料(年会プログラム・要旨集や学会の会報など)を使って何かできないかと思案している。次期理事会・執行部で学会創立50周年事業の計画・準備が動き出す際、連携して具体的な企画の検討を進めたい。

・現行の年会(会期三日)に比べて参加登録費を大きく超えることのないよう留意する。

6)理事選挙結果報告
 中川庶務幹事より第24期理事選挙結果の報告がなされた。2024年10月2日に開催された第24期新理事会準備会議において、木村宏氏が第24期理事長に選出された。

7)学会誌『Genes to Cells』編集報告
 上村匡編集幹事より配付資料に基づき報告が行われた。
 まず、Continuous Publicationへの移行について説明がなされた。現在Genes to Cellsの各号は目次が確定したのちに正式出版されている。校了して出版準備が整った論文はオンライン先行出版され、正式な出版となるまでにタイムラグが生じていた。2025年1月のContinuous Publication移行後は、各号の目次は空の状態でスタートし、新たな論文が次々と追加され目次がその都度更新されていく。全ての論文が校了後すぐに正式出版されることで、より一層の迅速化が実現する。また、学術論文等の即時オープンアクセスに関する情報共有がなされ、出席理事のあいだで意見が交わされた。
 続いて、本誌における投稿論文が順調に推移していること、本福岡年会の展示会場にて今年も3年分のカバーアートタペストリーを展示していることの説明がなされた。
 本年9月、APC(掲載料)を支払ってOpen Accessとなった20報以上の論文がPubMed Central(PMC)にデポジットされていなかったことが明らかになった。解消されたとは言え、今回の影響を受けた著者への対応も含めて再考するようWiley社へ促していることが報告された。

8)各種学術賞、研究助成候補への学会推薦状況について
 斉藤典子賞推薦委員長代理、加納純子委員より、2024年に本学会より推薦した各種学術賞について報告がなされた。引き続き、杉本亜砂子研究助成選考委員長より、2024年の研究助成推薦状況と結果等について報告が行われた。

9)キャリアパス委員会報告
 胡桃坂仁志キャリアパス委員長代理、鐘巻将人委員より、配付資料に基づき委員会の活動内容が報告された。本年会においては以下2企画のランチタイムセミナーを開催するので、理事各位には積極的に参加いただきたい。

1.『この人たちに聞こう!キャリア形成と本音』(年会初日/11月27日)

2.『研究生活、天国ですか?地獄ですか?』(年会3日目/11月29日)
(*2の事前アンケート(2024.8.7-26)には249名の回答を得た)

 第47回年会における属性調査結果より、「バランスの取れた研究環境を築くために~年会における発表者等の属性調査~(女性比率の推移表)」が作成され、学会HPでも公表している。本年会では、公募シンポジウムの企画公募で募集要項に「指定演者のうち70%以上を特定のジェンダーとしないよう構成をお願いする」ことが記載されたこと、公募シンポジウムスピーカーの女性比率が35%を超えたことなどが報告された。

10)研究倫理委員会報告
 小安重夫研究倫理委員長より今年の研究倫理ランチョンセミナーの内容について報告が行われた。

『最近の学術論文の動向:フェイク論文が増えている?学術的品質保証の必要性』
(年会2日目/11月28日)

 近年、科学技術の飛躍的な進歩と、最近では生成AIの発達等も相まって、研究はスピーディーに進められ、サイエンスの発展に大きく貢献している。しかしその一方で、生成AIはフェイク論文の量産にも利用されている現実が明らかになってきている。
 そこで、NatureのEditorやNature Cell BiologyのChief Editorを長く務められ、現在、EMBO PressのHeadであり、DORA(San Francisco Declaration on Research Assessmentサンフランシスコ研究評価宣言)のco-founderのひとりで、研究倫理に関する問題に長年取り組んでおられるBernd Pulverer博士に講演をお願いすることとした。また、原英二教授には、ご専門の細胞老化関連分野で研究データの品質管理の問題に取り組んでおられることから、バイアスのない誠実な研究結果を得るための方法等について指導いただけることを期待している。
 講演終了後、研究倫理委員を交えてパネルディスカッションを行うので、理事会関係者においてもぜひ参加いただきたい。

11)国際会議支援・選考委員会報告
 小林武彦国際会議支援・選考委員長より、第13回目(2025年)となる国際会議支援についての選考結果が報告された。本年の応募は3件で、選考委員会における慎重な審査を経て、理事長承認のもと、以下の会議が採択された。

≪会議名称≫
(和文)第七回国際植物維管束生物学会議
(英文)7th International Conference on Plant Vascular Biology(PVB2025)

開催責任者:青木 考(大阪公立大学・教授)
会期:2025年7月7日(月)~11日(金)
会場:KKRホテル大阪
助成金額:100万円

≪会議名称≫
(和文)第7回国際SOXカンファレンス;遺伝子から紐解く、発生・疾患
(英文)The VIIth International Workshop on SOX Transcription Factors

開催責任者:金井正美(東京医科歯科大学・教授/申請時)
会期:2025年9月8日(月)~11日(木)
会場:軽井沢プリンスホテル
助成金額:150万円

≪会議名称≫
(和文)タンパク質・オルガネラ寿命制御に関する国際会議
(英文)International Symposium on Protein and Organelle Lifetime

開催責任者:村田茂穂(東京大学・教授)
会期:2025年10月30日(木)~11月2日(日)
会場:奈良春日野国際フォーラム甍
助成金額:100万円

12)生命科学教育について
 篠原彰生命科学教育担当に代わり、見學美根子副理事長より配付資料に基づき、高校などへの講師派遣ならびに本年会における高校生研究発表会の状況について報告がなされた。
 講師派遣については、本年2月下旬にメール配信にて講師を募り、300名以上の会員に登録いただいた。その内、登録時に承諾を得た講師の氏名・所属・専門分野などを学会HPで公開した効果もあってか、実施件数がコロナ前の水準に戻ったことが報告された。SSH指定校のように講師の交通費がサポートされるケースもあるが、そういった予算のない場合には学会が交通費の一部をサポートしている。
 今年で13回目となる高校生発表については、例年同様に年会最終日(11月29日)のポスター時間帯に口頭発表とポスターが予定されている。理事各位にはディスカッサーとしてぜひご参加いただきたい。
≪第47回年会における高校生研究発表会:発表件数は次のとおり≫
・口頭発表25演題・ポスター発表39演題・参加校26校
 検討事項として、講師派遣の対象を一般の方や企業にも拡大すること、高校生発表の参加条件・応募要項の一部を見直すことなどが篠原担当よりあげられた。次世代を担う若者に生物学への興味関心を高めてもらうという生命科学教育事業の目的に鑑み、高校生あるいは教育現場からのヒアリングをもとに各年会にて検討することとなった。また、他学会の高校生発表では、優秀な発表を表彰するようなケースもみられるが、本学会ではすべての発表を平等に扱うこれまでの方針を維持することが理事会で確認された。
 なお、本事業を運営するにあたり、財団等から支援を受けることを検討してはどうかとの意見があがり、次期への申し送りとされた。
 

2.審議事項
 

1)令和6年度(2024年度)決算承認の件
 東山哲也会計幹事より令和6年度活動計算書の収支について詳細説明がなされた。決算概要であるが、前期繰越正味財産額1億8,341万円に対し、次期繰越正味財産額は1億8,714万円となり約373万円の黒字決算で終えることができた。管理費として、会員オンラインシステムのサーバー老朽化に対応するため(2007年以来のサーバー更新)、クラウド化の費用として約150万円を支出したものの、昨年の第46回年会の決算が黒字であったこと、『Genes to Cells』の出版社からの利益折半の精算が順調であったこと(精算時の為替レートがほぼ想定通りであったこと)が、これらの事業収入が黒字となった主なポイントと言える。会費納入については、納入率は前年度より微増であった(正会員会費の納入率94.6%、学生会員会費77.4%)。さらに、事業費の内訳表に基づき、各事業科目別の収支についても説明がなされた。本決算においては、消費税約184万円を納めており、税務処理については顧問契約を交わしている税務専門家の指示のもと、収益事業部分の法人確定申告を行った。
 本決算は本年10月23日に宮城秀敏公認会計士の監査を受け、さらに同年11月6日に佐々木裕之監事、塩見美喜子監事による会計監査を受け、配付資料のとおりの監査報告書が提示されている。
 続いて、佐々木監事より11月6日に学会事務所において、塩見監事と共に会計監査を実施し、監査報告書に記載したとおり、帳簿ならびに会計証憑類は正確に整えられており、各金融機関の通帳と残高証明書をすべて確認し、同決算を認めたことが報告された。
 審議の結果、本決算は理事会で承認され、第47回通常総会に諮られることとなった。

2)令和7年度(2025年度)活動予算書承認の件
 東山会計幹事より、令和7年度活動予算書と同活動予算・事業費の内訳について説明が行われた。本予算の編成に際しては、定期預金の一部組み替えと国際関係予算についても合わせて審議することが事前に確認された。
 まず予算の概要であるが、支出項目については前年決算の実績をベースに、物価上昇を加味して各科目を微調整している。Genes to Cellsの出版収入は、利益折半1,500万円+定額編集補助100万円の計1,600万円を見込んでいるが、編集業務費の増大と円安によるオンラインオープン費用の支出増によって利益は圧縮されることが予想される。その一方で、第47回年会の収支が順調であることから、その剰余金の一部を、学会ホームページのリニューアルと国際関係予算にあてる編成としていることが説明された。
 続いて、昨年の通常総会において出席者より提出された以下の意見に関連して、国際関係予算についての検討が行われた。
*「今後物価高騰やGTCの収入が減少した場合のことなども考慮し、5年後、10年後の状況を見据えて、コスト削減を検討いただきたい。特に、年会国際化の取り組みが継続して行われるようになったことで国際会議支援事業は既に役割を果たしているのではないか。会員のためになっているかという視点で評価し直す時期にきているものと思われる。」(令和6年度(第46回)通常総会記録より)
 本学会では、日本発のoriginalityの高い国際会議を育て、若手研究者のサポートと、日本発の研究を世界に向けて発信する場を設けることを目的に国際会議支援事業を立ち上げ、これまで計31会議に対して総計5,300万円の開催補助金の助成を行ってきた。しかし、当初期待されていたような、年会とは独立したサテライトの位置付けとなる国際会議の申請にはつながっていないなど、本事業による支援が会員のメリットとなっている状況とは言い難い。その一方で、EMBOやASCBといった国際機関との連携は着実に進んでおり、継続的に関係を維持することは分子生物学会にもプラスに作用すると考えられる。そこで、国際会議支援事業は発展的に停止し、国際関係予算として、本学会の年会における海外研究者の招聘費や国際的な学会連携への補助金などに200万円をあてることが執行部より提案された。
 この提案に対し、出席理事より国際会議支援事業によるサポートをメインとした国際会議・国際シンポジウムからの申請が一部であったこと、渡航費等の高騰を念頭に海外研究者の招聘予算とすることへの賛同意見のほか、国際対応の重要性から予算はもっと増額すべきではないか.年会参加費を下げる予算としてはどうか.分野横断的な年会の国際化はデメリットもあるのではないか.年限付きの措置として次期理事会で検討してもらいたい.といった意見も提出された。これらの議論をふまえ、令和7年度の国際関係予算は350万円とすることが決まり、国際会議支援事業は同6年度をもって停止することとなった。
 次に、2022年11月の定例理事会(幕張)で出席理事より提出された、流動資産をもっと資金運用すべきであるとの意見について、東山会計幹事よりこれまでの経緯と今回の執行部提案に関する説明が行われた。
 資産運用に関する今回の執行部案は、昨年の定例理事会(神戸)において執行部案としていた「特約付自由金利型定期預金 *」の再提案である。昨年の提案時には理事会で様々な意見が交わされ、ファンドマネージャーなど高度な金融知識を有する専門家からも意見聴取したうえで、あらためて執行部より理事会に諮ることとなった。そこで本年6月、ファンドマネージャーの経験を有する資産運用の専門家を招き検討会が実施された。分子生物学会がリスクを取らずに資産を増やす現実的な路線として、昨年の理事会で執行部案としていた内容がよいとのアドバイスがあり、今回の再提案に至った。
* 本学会と取引のある信託銀行より提示(推奨)されたもので、定期預金のうち5,000万円をこの「特約付自由金利型定期預金」7年ものか5年ものに切り替えることを執行部案としていた。(参考:2024年11月7日時点の金利で5,000万円を特約定期で組んだ場合の満期時における利息手取り額は、7年もので約183万円、5年もので約112万円となる)
 本提案を受け、理事より「現在の投資で最も安全なのは米国債で、為替の変動があったとしても、換金しないかぎり毎年5%ほどの運用益が見込める.多額の流動資産を持ち続けることのほうが理事会の責任と言えるのではないか.ペイオフのリスクを考えれば1,000万円を超える預金は分散すべき.」、「(前述の国際関係予算に関連して)より大きな予算を未来に投資すべきではないか.」、「災害時対応などへの備えから、5,000万円という規模は理解できる.」、「専門家の見解は、本学会の事業活動を十分に理解されたうえでのことであり、執行部提案に賛成する.」、「ハイリスク・ハイリターンの金融商品には手を出すべきではないという、これまでの理事会での議論を尊重すべき.」など様々な意見が提出された。本件については、討議の内容とともに数字に関しても正確に記録するため多数決が適切との意見が出され、中川庶務幹事の進行のもと以下のように出席理事(33名)による採決が行われた。

・定期預金(流動資産)のうち5,000万円を特約定期へ組み替えることについて
賛成:24票、反対:9票、白票:0票

・その特約定期を何年もので組むかについて
5年もの:31票、7年もの:0票、白票:2票

 採決の結果、現在の定期預金(流動資産)のうち5,000万円を特約付自由金利型定期預金の5年ものへ組み替えることとなった。
 令和7年度の活動予算書は一次案を一部修正し、当期収支プラス14万円の予算案として理事会で承認され、第47回通常総会に諮られることとなった。

3)他学会との連携について
 深川竜郎理事(第45回年会長)より、日本生物物理学会より本学会に検討依頼のあった学会連携に関する説明が行われた。その内容は、2022年に第45回幕張年会で適用された、それぞれの学会の会員が互いの会員にならなくとも、(非会員の参加費ではなく)会員価格の参加費で年会に参加・発表できるというもので、分子生物学会では第41回年会と第42回年会において同様の形態で日本生態学会と連携している。
 理事会で意見が交わされ、本学会における『年会の開催方針について(2018.11.27策定・承認)』をふまえ、まずは各年会長が検討するという従来の方針を維持することとなった。小林第48回年会長と水島第49回年会長は方針決定後、理事会にそれぞれ共有する。

4)『Genes to Cells』次期編集長について
 本学会の学会誌『Genes to Cells』は富澤純一初代編集長、柳田充弘2代目編集長に続き、西田栄介3代目編集長が任に就いているが、後藤理事長より次期編集長(2025年1月就任予定)として、上村匡編集幹事が推薦され、満場一致で承認された。また、20年以上にわたり編集幹事として本誌に尽力された同氏に、出席理事より謝意が伝えられた。
 続いて、上村匡氏より新編集長就任に際しての挨拶が行われた。

5)第51回(2028年)年会長について
 後藤理事長より、第51回年会については、年会長を東京大学医科学研究所・稲田利文会員に依頼したいことが諮られ、承認された。

6)第24期理事会の体制、執行部、幹事、各種委員会の委員長/委員について
 木村第24期理事長より、役員・幹事・各委員会名簿(案)が配付され、原案どおりに承認された。

7)第24期監事候補の選任
 後藤第23期理事長から、第24期の監事候補として井関祥子会員、塩見春彦会員が推薦され、承認された。監事については第47回通常総会で承認を得た後、正式選任となる。

8)第24期副理事長の選任
 事務局より副理事長選出に関する細則の説明がなされ、中川庶務幹事の進行のもと議事が進められた。その後、24期出席理事により投票が行われ、副理事長として、倉永英里奈氏と後藤由季子氏が選任された。

9)その他
 理事会より事務局の福田博氏へ、本学会の運営を長年支えたことへの感謝が伝えられた。
 最後に後藤理事長より退任の挨拶がなされた。本日の活発な議論が物語っているように、これからも分子生物学会が日本各地の若手を盛り上げるコア学会であり続けることを期待している。ご協力いただいた執行部・理事各位に感謝したい。
 

 上記、第23期・第24期 合同理事会の議決および確認事項を明確にするため、この議事録を作成し、議事録署名人はここに記名する。

2024年11月26日

特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第23期・第24期 合同理事会

議    長  後 藤 由 季 子

議事録署名人  石 黒 啓 一 郎

議事録署名人  中 山 潤 一