基金運営委員会委員長 山本正幸
「日本分子生物学会若手研究助成富澤純一・桂子基金」による第五回研究助成の最終審査を5月9日に行い、5名の方々に助成を決定いたしました。応募者は92名、お名前からの推定で男性75名、女性17名でした。書面審査により10名の方をヒアリングにお招きしました。研究内容および研究環境等について伺った結果、助成対象者として男性4名女性1名を選びました。
過去の審査と同様に、審査過程で性別に配慮することはなく、また特定の立場を優先したということもありません。当基金の目的とするところは、分子生物学、あるいはさらに広く生命科学の新しい展開を目指す研究を志しながらも、研究費の欠乏や生活上の制約のために十分に力を発揮できていない若手研究者に、使途を限定しない助成を行って、研究の発展を可能にさせることです。したがって、研究内容が高度な提案であっても、他の研究資金でその大半は実行可能というような場合には、助成の必要度は低いと判定される傾向にあります。
審査過程では応募者が日本分子生物学会会員か否かは非開示でしたが、結果的には助成対象者5名のうち3名が会員、2名が元会員でした。ヒアリングを行った10名の方(男性9名女性1名)については5名が会員、4名が元会員、1名が非会員でした。今回は、ヒアリング対象者に海外で研究生活を送っていて4月から日本に職を得た方が多く、元会員が目立ちました。
基金運営委員会および分子生物学会事務局では、使途を限らない本助成の特色を活用した、創意に富んだ研究推進提案を歓迎いたします。来年度以降も優れた研究を掲げて奮ってご応募ください。
なお、採択されなかった応募者から、審査における評価の開示や申請改善への助言などを求められるケースが出てきています。個別のお問い合わせにはお答えできない旨をこれまで回答していますが、応募者の申請書作成技術の向上のために、評価について何らかのフィードバックを行うことが可能かを今回委員会で検討いたしました。しかし、現在の審査体制では、100名近い応募者の方すべてに責任が負えるような改善点のコメントを付けることは負担が大きすぎ、また、基金の提供者である富澤純一先生も現行審査方式の維持を支持しておられますので、今後も個別のお問い合わせには回答しないという原則を踏襲することといたしました。
以上
「日本分子生物学会 若手研究助成 富澤純一・桂子基金」基金運営委員会
委員:山本正幸(委員長)、小原雄治(副委員長)、荒木弘之、上村 匡、大杉美穂、近藤 滋、塩見美喜子、東山哲也
■第5回(2015年)日本分子生物学会 若手研究助成の助成対象者
(氏名・所属機関・研究題目)50音順
○小原圭介(北海道大学大学院薬学研究院)
細胞膜脂質非対称の感知機構と細胞応答の解明
Elucidation of sensing mechanism of plasma membrane lipid asymmetry and cellular response
○進藤麻子(名古屋大学大学院理学研究科)
細胞集団の不均一性を基盤とする組織形態の確立・維持機構
Cellular Heterogeneity to drive collective cell movement during tissue morphogenesis.
○丹羽伸介(東北大学学際科学フロンティア研究所/申請時の所属はStanford University)
感覚受容細胞の形づくり
Molecular Mechanisms that regulate the morphogenesis of sensory neurons
○宮腰昌利(秋田県立大学生物資源科学部/
申請時の所属はInstitute for Molecular Infection Biology, University of Würzburg)
原核生物における mRNA の3'末端から生成する small RNA による転写後調節
Post-transcriptional regulation by small RNAs derived from the 3'UTR of prokaryotic mRNAs
○村山泰斗(東京工業大学大学院生命理工学研究科/申請時の所属はCancer Research UK)
ゲノム安定性に必須の Smc5/6 複合体の機能解析
Functional analysis of an essential genome stability factor Smc5/6 complex