第3回(2013年) 富澤基金による研究助成の審査経過・結果報告

基金運営委員会委員長 山本正幸

「日本分子生物学会若手研究助成富澤純一・桂子基金」による第三回研究助成の最終審査を5月11日に行い、下記の4名の方々に助成を決定いたしました。応募者は123名、お名前からの推定で男性93名、女性30名でした。応募者に占める女性の比率が年々増加しています。助成対象に選ばれたのは男性1名女性3名でした。

 今回は、海外で研究し、独立ポジションを求めているか、得ることが決まったばかりの女性3名が選ばれるという、特徴のある結果となりました。しかし、審査過程で性別に配慮することはなく、また特定の立場を優先したということもありません。当基金の目的とするところは、分子生物学、あるいはさらに広く生命科学の新しい展開を目指す研究を志しながらも、研究費の欠乏や生活上の制約のために十分に力を発揮できていない若手研究者に、使途を限定しない助成を行って、研究の発展を可能にさせることです。したがって、研究内容が高度な提案であっても、他の研究資金でその大半は実行可能というような場合には、助成の必要度は低いと判定される傾向にあります。

 審査過程では応募者が日本分子生物学会会員か否かは非開示でしたが、結果的には助成対象者の全員が会員でした。ヒアリングに選んだ9名の方(男性4名女性5名)については7名が会員、2名が非会員でした。

 基金運営委員会および分子生物学会事務局では、使途を限らない本助成の特色を活用した、創意に富んだ研究推進提案を歓迎いたします。来年度以降も優れた研究を掲げて奮ってご応募ください。

「日本分子生物学会 若手研究助成 富澤純一・桂子基金」基金運営委員会
委員:山本正幸(委員長)、岡田清孝(副委員長)、阿形清和、大隅典子、近藤 滋、塩見美喜子、嶋本伸雄、谷口維紹

■第3回(2013年)日本分子生物学会 若手研究助成の助成対象者
(氏名・所属機関・研究題目)50音順

○小島志保子(UT Southwestern Medical Center)
Poly(A)鎖長の変化による神経可塑性制御機構の解明
Poly(A)denylatome analysis of dendritic protein synthesis and synaptic plasticity

○竹ヶ原宜子(University of Pennsylvania, School of Medicine)
破骨細胞融合メカニズムの解明
Elucidation of osteoclast fusion mechanisms

○坪内知美(MRC Genome Damage and Stability Centre, University of Sussex)
胚性幹細胞のゲノム恒常性維持機構の解析
Understanding the Mechanism for the Maintenance of Genome Stability in Embryonic Stem Cells

○松田憲之(東京都医学総合研究所)
パーキンソン病の発症メカニズムを、急性ミトコンドリア障害の観点から明らかにする
Elucidate the pathogenic mechanism of Parkinson's disease from the viewpoint of acute mitochondrial dysfunction