基金運営委員会委員長 小原 雄治
「日本分子生物学会若手研究助成富澤純一・桂子基金」による第8回研究助成の最終審査を5月12日に行い、4名の方々に助成を決定いたしました。応募者は105名、お名前からの推定で男性81名、女性24名でした。書面審査により8名の方をヒアリングにお招きし、研究内容および研究環境等について伺った結果、助成対象者として男性1名女性3名を選びました。
富澤基金の目的とするところは、生命科学の新しい展開を目指す研究を志しながらも、研究費の欠乏や生活上の制約のために十分に力を発揮できていない若手研究者に、使途を限定しない助成を行って、研究の発展を可能にさせることです。公募要領に「申請者の単独研究、または申請者が中心になって行っている共同研究を対象とします」とありますように、審査にあたっては申請者の独自性を重視しました。自らが知りたいことを自らが工夫して明らかにしていくことは科学の原点ですが、これができるのは若手の特権と言えます。もちろん、それを実現するためには論理的かつ緻密な計画が必要ですし、それを裏付ける研究実績も必要です。これらの点を考慮した上で、独自性の高い提案を選びました。本助成はこれまでの研究業績に対する褒賞ではありませんし、研究内容が高度な提案であっても、他の研究資金でその大半は実行可能というような場合には、助成の必要度は低いと判定される傾向にあります。これらの方針は今後とも堅持しますので、応募される方はご留意ください。
今回、助成対象者は女性が多くなりましたが、これまで通り審査過程で性別に配慮することはなく、特定の立場を優先したということもありません。審査過程では応募者が日本分子生物学会会員か否かは非開示でしたが、結果的には助成対象者4名のうち1名が会員、1名が元会員、2名が非会員でした。
基金運営委員会および分子生物学会事務局では、使途を限らない本助成の特色を活用した、創意に富んだ研究提案を歓迎いたします。来年度以降も優れた研究を掲げて奮ってご応募ください。
「日本分子生物学会 若手研究助成 富澤純一・桂子基金」基金運営委員会
委員:小原雄治(委員長)、林 茂生(副委員長)、大杉美穂、黒田真也、後藤由季子、杉本亜砂子、東山哲也、深川竜郎
■第8回(2018年)日本分子生物学会 若手研究助成の助成対象者
(氏名・所属機関・研究題目)50音順
○小田裕香子(京都大学ウイルス・再生医科学研究所)
バリア形成機構の解明
Dissecting the organization mechanism of the barrier
○久保 郁(国立遺伝学研究所)
視覚情報処理を制御する神経回路の機能と結合様式の解明
Function and connectivity of the optic flow processing circuit in the zebrafish pretectum
○後藤 彩子(甲南大学理工学部生物学科)
アリ科女王の長期間の精子貯蔵機能に関与する分子の特定
Identification of molecules related to long-term sperm storage in ant queens
○深谷 雄志(東京大学定量生命科学研究所)
エンハンサーによる転写制御ダイナミクスの統合的理解
Elucidating enhancer dynamics in transcriptional regulation